オジさんの科学vol.049 2020年1月号
2020年1月に配信した文章を2021年9月に微修正し、掲載しました。
「腹が、減った」は、TV版「孤独のグルメ」の主人公、井之頭五郎の決まり文句だ。いつも旨そうに食べる。「空腹は最高の調味料」とソクラテスは言ったとか。
空腹になると、本当に味覚は変化するのだろうか?
ソクラテスの死後2,400年以上たった昨年(2019年)、生理学研究所と東京大学の共同研究チームが、そのメカニズムを解き明かした。
続きを読むオジさんの科学vol.047 2019年11月号
2019年に配信した文章を微修正し、2021年5月にアーカイブしました。
11月2日、南アフリカの優勝でラグビーのWカップが閉幕した。この1ヶ月、ボクの周りにも“にわかファン”が多数出現した。そういう自分もスコットランドに勝った日は、うれしくてLINEをしまくった。
チケットの販売率は99.3%、観客総動員数は170万4443人を記録した。ワールドラグビーのボーモント会長は「最も偉大なW杯として記録に残る」と賞した。
台風19号の被災地の宮古で、泥の掻き出しをしてくれたカナダチームには、感謝の気持ちで涙が出た。
身長2mで体重が130kgあっても、肌や髪や目の色が違ってもWカップラグビーのすべての選手は、生物学的にはボクと同じ「種」である。世界中に77億人いるヒトは、皆「ホモ・サピエンス」だ。
一方で同じ霊長類のゴリラの場合、マウンテンゴリラと西ローランドゴリラは異なる種とされる。チンパンジーにも、いわゆるチンパンジーの他にボノボという別種がいる。つい最近、外見からは全て同じだと思っていたキリンが、6種にも分かれていると判った。
ヒトも数万年前までは、複数の種がボクたちホモ・サピエンスと共存していた。
続きを読むオジさんの科学vol.046 2019年10月号
2019年に配信した原稿を微修正し、2021年にアーカイブしました。
上野国立科学博物館の「恐竜博2019」に、息子と二人で行ってきました。
お昼を食べて上野駅「翼の像」の前で待合せ。うちのカミさんと息子のヨメさんは、恐竜なんぞに興味無し。その場で別れて浅草に行っちゃいました。
これでいいのだ。恐竜が大好きなオジさんたちは、別行動なのだ。
恐竜博の目玉は3つあった。一つは「デイノニクス」の骨格展示。この恐竜は、のろまな変温動物から敏捷な恒温動物にイメージを変えるきっかけをつくった。ジュラシックパークに出てくる小型恐竜ヴェラキラプトルをイメージして欲しい。素早く動き、高くジャンプして後ろ足の爪で獲物に襲いかかる。始祖鳥と骨格が似ていたので、恐竜と鳥の関連性を想起させるきっかけにもなった恐竜だ。
2つ目が「デイノケウルス」、恐ろしい手という意味の恐竜だ。最初に見つかった手の骨が、やたら大きかったからとか。
そして、日本恐竜研究史上最大の発見と言われる大型恐竜「むかわ竜」の全身骨格の展示。北海道むかわ町で発見されたので、むかわ竜と呼ばれる。
今回は、北海道大学、穂別博物館、筑波大学などの共同研究グループが9月に発表したプレスリリースを中心に、むかわ竜の最新情報をお伝えします。
前足が華奢なことや背骨の上に伸びる突起の形から、むかわ竜は新種の恐竜であることが判った。付いた名前が「カムイサウルス・ジャポニクス」。日本の神の竜という意味です。神龍だぁ~。ハドロサウルス科に分類される。ちなみにハドロサウルスの仲間は、顔が似ているのでカモノハシ竜とも呼ばれる。面長なので、ドラゴンボールの神龍(シェンロン)にちょっと似ている。
むかわ竜は、二足歩行か四足歩行か判っていない。体重は前者なら4t、後者なら5.3tと推計されている。頭からしっぽの先まで約8mもある。
発掘された化石は、おそらく12歳以上の大人だったと考えられている。骨の断面を詳しく調べ、成長によってできる年輪のような線から推計された。
恐竜は結構長生きだったと考えられている。ティラノサウルスの寿命は30歳程度、ブロントサウルスなどの竜脚類は100歳以上だったとも言われる。
ハドロサウルスの仲間にはトサカを持っているものがいる。むかわ竜はトサカがついている鼻の骨が残っていないので、正確には判らない。でも、周辺の骨の様子が平たいトサカを持ったハドロサウルス科の仲間に似ているので、トサカを持っていたかもしれないそうだ。
むかわ竜は、白亜紀カンパニア期の水深200m程度の海底の地層から発見された。今から7~8,000万年前、恐竜時代の最後の方に近い。
海に流された死体が、海底の泥の中に埋もれて化石になった。
2003年に最初の化石が発見された時は、フタバスズキリュウの様な首長竜かと思われていた。寄贈された穂別町立博物館(現むかわ町立穂別博物館)では、「クビナガリュウ?」というラベルをつけられていたそうです。
2010年にクビナガリュウの専門家の佐藤たまき東京学芸大学准教授が、同館を訪れた。同氏はこの標本をきれいにクリーニングし、翌年「クビナガリュウではないと思われる」と報告した。
これに驚いた博物館が連絡を取ったのが、恐竜が専門の北海道大学の小林快次教授だった。今回の共同研究グループのリーダーである。小林教授はさっそく再調査し、恐竜であることを確認した。
2013年から本格的な発掘作業が始まり、2017年に大型恐竜としては国内で最も完成度の高い全身骨格であることが判明した。全身のおよそ6割の骨が確認され、体積で言えば8割をカバーする骨格が掘り出された。
むかわ竜は植物の葉を磨り潰して大量に食べていた。口の中には小さな歯がたくさん生えていて、まるでおろし金の様だった。歯がすり減っても次から次へと生え変わった。
ハドロサウルス科には、大勢集まって巣を作り、子供たちの世話をするという社会性を持つものもいたようだ。同じ科のパラサウロロフスは、トサカの中が空洞になっており、笛のように音を出して仲間とコミュニケーションを取っていたのではないかと言われている。
むかわ竜も、海岸の近くに家族や仲間と一緒に住み、子育てをしながら集団生活を送っていたのかもしれない。
別行動だったうちの家族も、翼の像に再集合しました。夕食は焼き鳥屋になりました。
今や、鳥は恐竜の一員として分類されています。翼を生やした恐竜が、鳥になったのです。
焼き恐竜の盛り合わせを発注しました。カミさんもヨメさんも、これは大好きです。
<参考資料>
プレスリリース
『むかわ竜を新属新種の恐竜として「カムイサウルス・ジャポニクス(Kamuysaurus japonicus)と命名』
雑誌
・日経サイエンス2018年9月号 『むかわ竜が明かす日本の恐竜最盛期』
・日経サイエンス2019年9月号 『実物化石が語る新たな恐竜像』
オジさんの科学vol.045 2019年9月号
※2019年9月に配信した文章を2021年5月に微修正し、アーカイブしました。
トウガラシの辛さを変化させる遺伝子が発見された。
2019年8月、京都大学と岡山大学、城西大学の共同研究グループが発表した。辛さは、「カプサイシン」に代表されるカプサイシノイドと呼ばれる辛み成分の量によって決まる。発見された遺伝子は、トウガラシのカプサイシノイド製造量を調整する。
インド料理、韓国料理、四川料理、メキシコ料理、タイ料理・・・辛くてうまい料理はたくさんある。ボクは辛いもの好きである。ココイチなら平均8辛、最高の10辛もOKだった。
しかし最近辛いものを制限してきた。胃に悪い、腸に悪い、尻に悪い、カラダに悪いと言われ続けてきたからだ。胡椒にワサビ、山椒と辛い物はいろいろあるが、尻まで辛くなるのはトウガラシだけだ。
トウガラシの辛さは、どの程度危ないのか。
オジさんの科学vol.43 2019年7月号
※2019年7月に作成し配信した文書を、2020年8月に微修正しアーカイブしました。
もうすぐ、土用の丑の日です。今年(2019年)は7月27日(土)ですよ。うなぎ屋はもとより、スーパーやファミレスでもポスターやのぼりをみかける。「うなぎ」は好きだが、近年ますます高い。ワンコインでうな 丼を食べられた昔が懐かしいなぁ。今年はうな次郎になるかもしれないなぁ。
先月、世界初そして最も高価なうな重の試食会が東京であった。会場は、霞が関の農林水産省。水産研究・教育機構増殖研究所で人工孵化した「ウナギ」が使われていた。味も食感も普通のかば焼きと全く変わらなく、美味しかったそうだ。
「完全養殖」間近と各メディアが取り上げた。
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