オジさんの科学

オジさんがオモシロそうだと思った科学ネタを、勝手にお裾分けします。

どうして落ち葉は色づくか?

 スポーツの秋だ。オジさんはゴルフに出かける。青く澄んだ空に向かって飛んでいく白球。と思ったら大きくスライスし、紅葉の林の中に吸い込まれていった。秋です・・・・。落ち葉を踏みしめてボールを探しに行く。

 街路樹も落葉樹が多い。街中でも黄色く色づいたイチョウ並木や真っ赤なモミジをたくさん見られる。赤坂Bizタワーは、自動ドアが開くたびに落ち葉が入り込んでくる。助けてください、レレレのおじさん。

 乙女が頬を染めるのは、恥じらいの徴。オジさんの顔が黄色いのは、肝臓が悪い証。黒いのはゴルフのやり過ぎ。色づくにはワケがある。今回は「紅葉&黄葉」について調べてみた。

 

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  まずは、美しい葉の色を作りだす色素について。
 そもそもなぜ植物の葉は緑色に見えるのか。
 これは葉緑体に含まれる「クロロフィル(親しみを込めてクロロ君と呼びます)」の色、葉緑素とも言う。光のエネルギーを使い水と空気中の二酸化炭素から、糖類や酸素を作りだす「光合成」をおこなう。光合成を行なうためにクロロ君は光を吸収する。でも、緑色付近の波長の光だけはほとんど吸収しない。その結果、反射されて来た緑色の光だけが目に届く。

 イチョウの葉などの黄色は「カロテノイド(こちらはカロテさん)」だ。ニンジンやトマトにも含まれる。カロテさんの仲間は高い抗酸化作用を持ち、目の機能強化、白内障加齢黄斑変性などの眼病予防に役立つとして、近年注目されている。

 モミジなどの赤は「アントシアニン(そしてアントちゃん)」の色。ポリフェノールの一種で赤ワインやブルーベリーなどに含まれる。アントちゃんも高い抗酸化作用を持つことで知られる。目にいいとも言われる。

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 つぎは色が変わるメカニズムだ。
 葉緑体の中には元々、クロロ君とカロテさんが入っている。夏の間、引っ込み思案のカロテさんはクロロ君の陰に隠れている。秋になり葉に送られる水分や栄養が削減されると、クロロ君が分解されていく。すると隠れていたカロテさんが見えるようになる。
 イチョウの葉はこうして黄葉する。秋じゃなくても栄養が行き届かなくなると葉は黄色くなるそうだ。

  一方モミジが紅葉するには別の仕組みが働いている。秋になり気温が下がると葉の根元と枝の間にコルクの様な層ができ、水分や栄養のやり取りが止められる。するとクロロ君に作られた糖分が葉に残ったままになる。これに紫外線が当たるとアントちゃんに変身する。その後クロロ君が消えていくとアントちゃんとカロテさんが残り、赤やオレンジになる。
 モミジが色鮮やかになるためには、昼と夜の温度差が大きく、日中たくさん日光を浴びることが必要になる。

 クロロ君が残ったまま落葉する樹木の葉は、赤褐色になる。

 

 紅葉や黄葉は目立つ。カラフルな生き物は、目立つことで有利に生き残れるように進化した。花はミツバチや蝶を誘うため。クジャクはメスの気を惹くため。毒をもった派手なウミヘビに擬態して身を守る魚もいる。

 ところが何故紅葉・黄葉する落葉樹はカラフルになり、しかもその葉を捨ててしまうのか、よく判っていないらしい。

 

 カロテさんやアントちゃんは抗酸化物質なので活性酸素から葉を守り、最後の栄養分を枝に送る手助けをするという説。

 紅葉が鮮やかな木ほどアブラムシの寄生が少ないという報告がある。カラフルになって植物食の虫を排除しているという説。

 逆にアリと共生するアブラムシを誘引し、アリに他の植物食の虫たちを退治してもらうためという説もある。

 どれも、いまいちピンとこない。まだまだ研究例も少ないようだ。
 たんに老化現象と片付ける説も有力らしい。

 

 そこでオジさんは考えた。
 落ち葉は木の根元に積もる。雪が降っても温かい(と思う)。イチョウの葉には防虫効果があると言われる。アントちゃんには殺菌作用がある。落ち葉は冬の厳しい環境から木を守る。紅葉・黄葉の「抗菌ふとん」説。
 しかもやがて堆肥となり、熱を発生し、翌春の栄養分となる。
 どう?こっちの方が、しっくりくるでしょ。

 

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 オジさんのゴルフ仲間には、カラフルなボールを好む人たちがいる。目立つから見つけ易いというメリットがあると言われる。しかしこの時季は禁物だ。オレンジや黄色のカラーボールは紅葉や黄葉と区別が付かなくなる。それなのに、使っちゃうオジさんたちのゴルフは進化しない。

 

オジさんの科学vol.023 
(2017年11月号として配信したものを微修正し、2020年1月にアーカイブしました)                                                         や・そね

 

参考資料:

竜田姫はだれなのか?-紅葉の適応的意義に関する仮説- 山崎一夫 
生物科学(2009) 第60巻 第2号

「紅葉」・「黄葉」のしくみ 国立科学博物館HP

紅葉のナゾ 森林総合研究所HP

紅葉の不思議 毎日小学生新聞