そーね。そうか。そうなのね。

オジさんがオモシロそうだと思った科学ネタを、勝手にお裾分けします。

インフルエンザは、なぜ流行(はや)る?

オジさんの科学vol.026 2018年2月号(2018年2月に配信した文章を、微修正し2020年2月にアーカイブしました)

 

 今年もオジさんの周りでは、インフルエンザが流行っている。まるでインフルエンザブームだ。猫も杓子もインフル。「先週20階でも、ついにインフルが出た」「昨日の打合せで目の前にいた宮本君が、インフルで倒れた」と挨拶代わりに交わす。そして「流行」と言われるようになる。普段は、ファッションとか音楽に関して使われる言葉だ。

 これほど何気なく「流行る」と語られる病気は他にはない。「流行性感冒」とも呼ばれる。 
 誰もが知ってるインフルエンザ。ヒトは6歳までにほぼ100%感染すると言われる。何故にこんなに流行るのか、調べてみた。

 

f:id:ya-sone:20200216111002j:plain

 

なぜ冬に流行る?

 インフルエンザがクリスマス&お正月好きだから、ではない。冬の気象条件がマッチしているのだ。

 ①冷気:インフルエンザウイルスは鼻やのどの粘膜で増殖する。適温は33℃。36℃のヒトの体温が冬の空気に冷やされてちょうどいい具合になる。

 ②乾燥:インフルエンザウイルスの大きさは約1万分の1mm。せきやくしゃみの飛沫に乗って運ばれる。冬は空気が乾いているので飛沫が浮遊しやすくなる。

 ③日照時間:日照時間が短くなり、ビタミンDの生産が減る。すると体内で、インフルエンザウイルスに反応する抗ウイルス作用を持つペプチドが減少する。

 ちなみに夏は都会の片隅でおとなしくしていると思われる。また渡り鳥のように熱帯地方や南半球に遠征しているという話もある。

 

なぜ日本中で流行る?

 とにかく並はずれて伝染(うつ)り易いようだ。「地球上に存在するウイルスの中で最も伝染力が強い」と書いている本もある。

 国立感染症研究所によると、昨シーズンの推計受診患者数 は約 1,672 万人だった。国民の7.6人に1人が病院に行ったことになる。

 流行っているのは日本だけではない。

 世界保健機関の報告によると、2018年1月現在、北半球の北米、北部および南西部ヨーロッパ、北アフリカ西アジア、東アジアでインフルエンザの活動が高まっているそうだ。一方南半球は「非流行期のレベル」とある。

 

 

なぜ毎年流行る?


 インフルエンザウイルスには色々な種類がある。大きく分けるとA型、B型、C型の3つ。A型はさらにいくつものタイプに細分化される。つまり今年罹(かか)って免疫が出来ても、来年も違うタイプには罹ってしまう。

 またインフルエンザウイルスは進化が速い。翌年には性質が変わっているから同じタイプでも免疫が効きづらくなる。8時間で次世代のウイルスを生むから、1年で約1000世代分変化する計算となる。ヒトなら約3万年分だ。

f:id:ya-sone:20200216111237j:plain

クロマニヨン人が現代人になってしまう。

 さらに、インフルエンザウイルスにはヒトと違って遺伝子をミスコピーした際のチェック機能が無い。その結果インフルエンザの遺伝子が変化する速度は、ヒトの数百万倍になる。これだと1年でアウストラロピテクスが現代人に進化してしまう。

 

いつから流行っている?

 科学的にインフルエンザと判っている大流行は、第1次世界大戦末期の1918年に発生した「スペイン風邪」。6億人が感染し、2000~4000万人が死亡したと言われる。日本でも2,300万人が罹り、38万人の死者が出たそうだ。1997年に、アラスカで氷漬けになったスペイン風邪患者とみられる遺体が発見された。そこからインフルエンザウイルスの遺伝子が見つかり判明した。

 

 語源の「インフルエンス」の意味は「影響を与える」。16世紀のイタリア人は星や寒気の影響で流行すると考えた。日本でも、平安時代や江戸時代にインフルエンザと思われる流行り病の記述がある。
 紀元前5世紀、ヒポクラテスはインフルエンザと思われる疫病の大発生を記録している。

 

 A型インフルエンザは「人獣共通感染症」という。カモ、鶏、アヒル、豚、犬、猫、馬、虎、アザラシ、アライグマ、クジラなど鳥類、哺乳類全般に感染する。杓子は罹らないが猫は罹る。そもそもの起源はカモらしい。

 

f:id:ya-sone:20200216111622j:plain 

ワクチンが効かないから流行る?

 2016年に発表されたワクチンの効果に関する研究によると、2009年に流行した新型インフルエンザのワクチンは感染を67%阻止した、とされる。つまり本来3人の患者が出るところを1人に減らしたということ。またA香港型では阻止率33%、B型では61%だった。
 現在のインフルエンザワクチンは、感染した後に威力を発揮する。ウイルスの増殖を抑え、重症化を防ぐ。
 出来た免疫は5カ月程度しか持たない。だから翌年までの効果はない。
 予測して作ったワクチンとその年流行したインフルエンザのタイプが合致しない場合もある。それでも接種の効果はあるそうだ。

  

 

流行りじゃないぞ、インフルは!

 どうやらインフルエンザは、ただの流行り病では無いようだ。古くてちっさい奴だが、常に進化し続ける。そして周囲に様々影響を与える。インフルを軽視してはいけない。
 同じように、オジさんたちも無視してはいけないのだ。

                                                                                                   

<参考資料>

~書籍~

新しいウイルス学入門/BRUE BACKS

インフルエンザ危機/集英社新書

インフルエンザパンデミック/BRUE BACKS

インフルエンザウイルスと人類の戦い/C&R研究所

ウイルス大感染時代/KADOKAWA

インフルエンザワクチンはいらない/双葉新書

ワクチンは怖くない/光文社新書

~Web~

国立感染症研究所HP

厚生労働省検疫所FORTH HP

meijiHP内「インフルエンザNav」

Health Press

Wikipedia

OKWAVE

JT生命誌研究館「宮田隆の進化の話」

朝日新聞デジタル「小児科医ママの大丈夫!子育て」