そーね。そうか。そうなのね。

オジさんがオモシロそうだと思った科学ネタを、勝手にお裾分けします。

おイヌさまさまなのだ。

 オジさんの科学vol.027 2018年3月号

(2018年3月に配信した文章を微修正し、2020年2月にHPにアップしました)

 

f:id:ya-sone:20200229093237j:plain 小学生の時に、リリーというスピッツの雑種を飼っていた。今の家には、10年前までチワワの光ちゃんがいた。現在は、光ちゃんに育てられたサビ猫の小鈴がだけだ。

 以前、ネコの話を取り上げた。このへんでイヌの話も書いておきたい。

 

 イヌが担う役割は、他の動物と比べて圧倒的に多い。番犬、猟犬、牧羊犬、警察犬、災害救助犬盲導犬聴導犬介助犬、軍用犬、麻薬探知犬白戸家のお父さん。  

 これだけ「仕事」を持っている動物はイヌだけだ。ネコの「駅長さん」は、切符を切ったりしない。  

  ちょっと「警察猫」を想像してみます。

 鼻は、かなり効く。ウチの小鈴は大好きなマグロ節を買ってくると、パックの封を切る前に小躍りし始める。
 身体能力も高い。かなりのスピードで犯人を追跡できそうだ。狭い道や障害物があっても大丈夫。
 イヌより夜目が利きそうだ。爪と牙で犯人を攻撃できそうだ。
 でも、ボクの言うことをマッタク聞かない。マグロ節のお預けなんて絶対しない。

 では「牧羊豚」はどうか。見張り役の方が勝手に居なくなってしまいそうだ。これをトン走という。

 

f:id:ya-sone:20200229093913j:plain イヌの祖先はオオカミと言われる。オオカミとイヌは、人間と同じく白目と黒目がはっきりしている。オオカミは集団で狩りをするため、互いにアイコンタクトをとっていると言われる。イヌも自分の視線を人間に向けてアイコンタクトをとる。指示を求めて見る。人間をまねて行動することも出来る。イヌも飼い主も、お互いに見つめ合うことで愛情ホルモンのオキシトシンが分泌される。

 イヌは人間の意図を理解し、従おうとする。

 

 「ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた」という本を読んだ。原題は「THE INVADERS」。インベーダー(侵略者)です。

 最終氷期のヨーロッパ、とある森の中で我々ヒト(ホモサピエンス)の集団がネアンデルタール人たちを襲う。しかしネアンデルタール人は体力に勝る。やりを携えて迎え撃つ。力負けして後退し始めるヒト。その時、背後からイヌたちが走り出してきた。ネアンデルタール人に牙をむいて飛びかかる。逃げまどうネアンデルタール人。哀れネアンデルタール人は滅びていった。

 みたいな話だと思ったら、全然違いました。

 

 我々ヒトの祖先とイヌが、直接ネアンデルタール人を攻撃したという証拠はない。

 著者のシップマンはペンシルヴァニア州立大学で名誉教授を務める人類学者。生態系における「侵入生物学」という観点で考察している。

 アフリカで生まれたヒトは、5万年ほど前(諸説あり)にヨーロッパに移り住んでいった。そのことで、保たれてきた生態系が大きく崩れたと推論している。ネアンデルタール人とヒトは食料をめぐって競合した。どちらもマンモスなどの大型の草食動物を獲物とするからだ。そしてヒトに獲物を奪われたネアンデルタール人は生き残れなかったという説だ。

 ヒトがイヌと組んで食物を占有したことにより、ネアンデルタール人だけでなく原始的なライオンやハイエナやクマ、小型のサーベルタイガーなどの肉食獣も絶滅した。

 

 イヌと組むことで狩りの効率が向上する。イヌは獲物を発見し、追跡する。吠えて囲い込み、狩人が到着するまで獲物を足止めする。

 さらに捕獲した獲物を引きずって運んだり、見張って他の肉食獣に奪われないようにする役目も果たす。

 フィンランドのヘラジカ猟では猟犬を従えた場合、狩人一人当たりの獲物の量が56%増加した。中央アフリカの研究では、ヤマアラシ猟にかける時間がイヌを使うと57%短縮したとの報告がある。

 

 イヌが家畜化された時期は、他の家畜より圧倒的に古いと推測される。確実にイヌと言える標本は、1万4000年前のドイツの遺跡から発掘されている。1万2000年ほど前に農耕が始まってから家畜化された他のすべての動物より古い。さらにイヌの特徴をもった3万6000年~3万3000年前の化石が、ベルギーやチェコ、シベリアで発見されている。もっと古いのではないかとも言われているようだ。

 

 しかし、オオカミからイヌが分かれ家畜化された正確な場所や年代は、DNA分析を行っても特定できていない。その理由はイヌと交配出来るイヌ属の動物が非常に多いからだ。オオカミ、コヨーテ、ジャッカル、リカオン、ドール、ディンゴ等は染色体の本数も同じだ。途中で色々と混血しているので、正確に分析できないらしい。

 

 なぜ古代のイヌがネアンデルタール人ではなく、ヒトが組んだのか。はっきりしたことはわからない。逆だったら滅びたのは我々だったかもしれない。

 きっとネアンデルタール人は、イヌより強いサーベルタイガーと組もうとしたに違いない。でもネコは、人間の言うことを聞かないのだ。

 

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                              や・そね

 

<参考資料>

「ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた」 パット・シップマン

「オオカミからイヌへ」 V・モレル 日経サイエンス2015年11月号

イヌの起源「オオカミ、ヒトに出会う」 知識探偵クエビコHP

「ヒトとイヌの絆形成に視線とオキシトシンが関与」麻布大学

 

【蛇足】

 イヌとオオカミのDNAが混在しているように、現代人の中にもネアンデルタール人のDNAが紛れていることをマックスプランク研究所が明らかにした。かつてネアンデルタール人とエッチしたヒトがいたらしい。

 また、3万7000~4万2000年前にルーマニアあたりで暮らしていた男性のDNAを調べたところ、4代前の先祖にネアンデルタール人がいたことがわかったという研究報告もある。ひいひい祖父ちゃんか、ひいひい祖母ちゃんがネアンデルタール人なのだ。