オジさんの科学

オジさんがオモシロそうだと思った科学ネタを、勝手にお裾分けします。

今年はシマウシ

オジさんの科学vol.118 2025年10月号

今年はシマウシ

 

 オジさんが横縞のシャツを着ても、強面のラガーマンには見えない。しかし、ウシを縞々にすると、近寄り難くなるらしい。すくなくともハエ君たちは。

 

 今年のノーベル賞は、生理学医学賞を坂口さんが、化学賞を北川さんが受賞した。

 先んじて、9月にイグノーベル賞の発表があった。こちらも、農研機構や京大などのチームによる研究が生物学賞を受賞した。タイトルは、「シマウマのような縞模様を描かれた⽜はハエに刺されないようになる」。この論文は、2019年に学術誌『PLOS ONE』に掲載された。

 

 ウシは始終尻尾を振っていますよね。あれはハエを追い払うためです。寄って来るのは吸血バエと言われる類。刺されれば、ウシだって痛いし痒い。ハエのウシ活を制限できれば、ウシのストレスも軽減されるはずです。

 

「シマウマが縞々なのは、防虫効果のためである」と言う説が有力視されており、2014年『Nature Communications』にも発表されていました。研究チームは、ここに目を付けました。

 ⿊⽑に⽩いスプレーで幅5cm程の縞模様をつけた「シマウシ」、何もしない「通常の⿊ウシ」、黒毛に⿊いスプレーで縞模様を描いた「クロ黒ウシ」を用意。30分間に寄って来るハエの数をカウントしました。

 通常の黒ウシとクロ黒ウシは同程度でしたが、シマウシはその半分以下しか寄ってきませんでした。

 

 縞々をハエが嫌がる理由は判っていないようです。しかし、コストがかからず、殺虫剤を使うより環境への影響が少なく、ウシへの負荷も小さい。シマウシは、ウシにも環境にも畜産業へもやさしいみたいです。

 

 ところで、イグノーベル(ignobel)賞とは、ノーベル(nobel)賞のパロディ。「崇高さに欠ける」と言う意味の「ignoble」をもじったものです。「人々を笑わせ、そして考えさせた業績」に与えられます。毎年1万点近くの研究が推薦され、その中から10点が選ばれます。

 しかし、おふざけを対象に選んでいるのではありません。『Nature』や『Science』に掲載された研究もたくさんあります。

 

 『風変わりな研究の年報 (Annals of Improbable Research)』のマーク・エイブラハムズ編集長が、1991年に立ち上げました。

 選定するのは、イグノーベル賞委員会。科学雑誌の編集者、科学ジャーナリストおよび多数の科学者で構成されます。中には、ノーベル賞の受賞者もいるようです。世界中の誰もが推薦することができ、自薦もあり。でも、自薦の場合はほぼ選ばれないと言う話もあるようです。千兵衛さんが、「アラレちゃんの発明」を推薦してもダメみたいです。

 

 ノーベル賞では「メダル」と「賞金」が授与されますが、イグノーベル賞では「賞状」と「記念品」がもらえます。賞状は、コピー。でも数人のノーベル賞受賞者のサインが入っているそうです。今年の記念品は、ヘンテコな胃のオブジェでした。去年までは、貨幣価値ゼロの10兆ジンバブエドルが賞金として贈られていましたが、今年はウェットティッシュに変わりました。これらは、ノーベル賞受賞者より授与されます。授賞式は、その他にも演出が盛々。 授賞式の様子を見たい方は、こちらをどうぞ。字幕版です。

 https://live.nicovideo.jp/watch/lv348433668

 

 日本の研究は、19年連続で計31回も受賞しています。そこでオジさんの記憶に残っている受賞研究をいくつか紹介してみたいと思います。

 

 2002年に平和賞を受賞したのが「⽝語翻訳機『バウリンガル』を開発」。タカラから発売された後は、どうなったのかしら。

 

 2008年認知科学賞の「単細胞⽣物の真正粘菌が迷路の最短経路を⾒つけることを発⾒」と、2010年の交通計画賞「鉄道などのインフラ整備に真正粘菌の『知恵』が役⽴つことを研究」は、同じ研究者のチームです。単細胞生物の「粘菌」も知性的にふるまうことを示しました。

 

 2012年の音響賞、「おしゃべりを続ける⼈を邪魔する装置『スピーチ・ジャマー』開発」。指向性マイクと指向性スピーカーを組合わせ、相手の声をちょっとだけ遅らせて発し、混乱させる装置。アプリがあるようです。

 

 2014年の物理学賞、「バナナの⽪の滑りやすさを証明」。バナナを踏むと地面との摩擦係数が約1/6になるそうです。イヤミは大げさではなかったんですね。ちなみにマリオカートは??みたいです。 

 

 2016年知覚賞の「『股のぞき』をすると、距離を正確につかみにくいことを証明」。天橋立の股のぞき効果を証明しました。

 

 2017年の生物学賞は「ブラジルに⽣息する昆⾍の雌に、雄のような形状の性器があることを発⾒」。性器の大発見と言われました。洞窟昆虫が専門の授賞者たちが、洞窟からのビデオレターで授賞式に参加していました。

 

 2023年の栄養学賞は「電気を通した箸やストローで飲⾷物の味を変えることを提案」。電気刺激で塩味を感じさせ、減塩を促進させる装置。高血圧対策に有効と言われ、商品化が進んでいるはずです。

 

 身近な疑問の解明も受賞につながる、それがイグノーベル賞ヒョウ柄の服を着たオバちゃんの視覚効果なんてどうだろうか。いつかはヒョウオバ。

                                                                                                や・そね

 

<参考資料>

26 Mar 2020: Kojima T, Oishi K, Matsubara Y, Uchiyama Y, Fukushima Y, et al. (2020) Correction: Cows painted with zebralike striping can avoid biting fly attack. PLOS ONE 15(3): e0231183. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0231183 | View

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兒嶋, 朋貴. 放牧地の環境条件に合わせた和⽜放牧管理に関する研究. 京都⼤学, 2022, 博⼠(農学), ⼄第13506号

http://hdl.handle.net/2433/277295

 

ナショナルジオグラフィックNews2014年4月7日「シマウマの縞の理由、防⾍説が最有⼒︖」

 

五十嵐杏南『“イグノーベル賞”研究40講 ヘンな科学』総合法令出版

 

「2025年『第35回イグノーベル賞』10賞全部解説!彩恵りりLab BRAINS

https://lab-brains.as-1.co.jp/enjoy-learn/2025/09/79084/

 

nippon.com【イグ・ノーベル賞】⽩⿊模様の「シマウシ」に⾍よけ効果 ⽇本⼈19年連続受賞

https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02550/

 

ニコニコニュース イグノーベル賞授賞式2025

https://live.nicovideo.jp/watch/lv348433668

 

イグノーベル賞2025youtube公式配信

https://www.youtube.com/watch?v=P8fhpgn3t88