そーね。そうか。そうなのね。

オジさんがオモシロそうだと思った科学ネタを、勝手にお裾分けします。

隙間の神様

オジさんの科学 vol.036 2018年12月号

 (2018年12月に配信した文章を、2020年5月に微修正しアーカイブしました)

 

 本格的な冬がやってきました。木枯らしの季節です。昔のアパートは、けっこう隙間風が入ってきました。

 我が家の猫の鈴さんは、炬燵の代わりに毛布の隙間に潜り込みます。いつの間にか扉の隙間からクローゼットに入り込んでいます。隙間が大好きなようです。

 裏路地のビルや野山の木々の隙間を抜けた先には、別世界がありそうな気がします。それに誘われてか、ボクのティーショットのボールは、よく林の隙間に遊びに行きます。

 

 生物も競合を避けて、様々な隙間で生きています。深海や土の中にも棲んでいます。

 商品も同じです。小さなブランドは、リーダーが手をつけない隙間を狙って新しい市場を開拓します。ポカリスエットは、スポーツドリンクと言うジャンルを切り開いたように。隙間の先には青い海が広がっているかもしれません。

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 先日ノーベル賞を受賞した本庶さんの研究も、最初はほとんど期待されなかったそうです。国内のあちこちの製薬メーカーに声をかけたものの、軒並み冷ややかな反応だったそうです。「何もやってくれなかった」と本庶さんは言っていましたが、その中で共同開発したのが小野薬品だったそうです。

 いま、免疫療法は手術、放射線抗がん剤に続く第4のがん治療として注目されています。

 

 判っても何の役にも立たないので、ずっと誰も調べなかった研究もあります。

 先日「チコちゃんに叱られる!」でも紹介された、指鳴らしのメカニズムの研究がそうでした。今年の3月末に研究成果が発表され、100年来の謎が解明されました。

  番組やニュースを観ていない人のために、簡単に説明します。「ヤッタルデ~」とか「シメタル」とか、心の関西弁が出る時に指の関節をポキポキ鳴らす、アレです。

 関節の骨と骨の隙間は「滑液(かつえき)」で満たされています。この液体が骨がすり減る事を防いだり、関節の動きを滑らかにします。関節を曲げると、滑液の中の圧力が変化します。急激に変化した時に、中に溶けていた気体が泡になる事があります。その泡が弾けて、ポキッと鳴るのだそうです。

 

 指鳴らしが泡の破裂音だとする説は、昔からありました。しかし指関節内部をリアルタイムで確認する方法がありませんでした。そこで仏のエコール・ポリテクニークのバラカット教授らは数学モデルを使い、理論的に泡が音を鳴らしていることを検証しました。

 

 さてもうひとつ、なんだかよくわからないし、役に立つかも不明。でも、ちょっとホッとするような研究を紹介します。natureダイジェストの12月号に載ったのは「タンポポの綿毛の秘密」です。

 タンポポの綿毛が、なぜあのようにフワリと浮遊するのか、これまで判っていなかったそうです。

 

 鳥や飛行機が飛ぶ時に、翼などと接する所に空気の渦ができます。この「渦輪(うずわ)」が物体を空中に浮かせる力を引き出しているそうです。ちなみに、このメカニズムは難しすぎてボクにはよく解りません。

 英エディンバラ大学の植物学者の中山尚美さんたちは、タンポポの綿毛を煙で満たした垂直な筒に入れ、風を送りました。煙の粒子をレーザーで光らせると、綿の上に渦輪が浮かび上がったそうです。

 

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 タンポポの種のように見えるのは痩果(そうか)と呼ばれる果実です。そこから柄が伸び、先端で傘の骨のように毛が広がっています。これが冠毛です。冠毛は90~110本あり、空隙率は92%で一定しているそうです。かなりスカスカなんですね。

 

 研究チームは、様々な隙間をもつシリコン製の小さな円盤つくり、実験してみました。するとタンポポの綿毛に近い空隙率の円盤だけが渦輪を維持できることが判りました。隙間だらけのタンポポの綿毛は、飛行には効率が悪そうに見えます。しかしこの隙間が渦輪を安定させているのです。

 

 最近「隙間の神」と言う概念を知りました。ウィキペディアには「現時点で科学知識で説明できない部分、すなわち『隙間』に神が存在するとする見方」とあります。科学が発達するにつれ、様々な自然現象を説明できるようになりました。太陽や月、雷や風などに神様は必要なくなってしまったのです。そして神様は、科学で証明されていない隙間にしか居られなくなったという話です。

 

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 今回の研究で、タンポポの綿毛の隙間にいた神様はどこかに行ってしまったのでしょうか。

 いえいえ今も綿毛の隙間で、小さな渦を作っている様に感じられます。

 ヒット商品も大発見も、指がポキッと鳴るのも隙間の神様の仕業かもしれません。林に飛んでいったティーショットが、なぜか時々フェアウェイに返ってくることがあります。これも隙間の神様が、ボールを蹴り出してくれているに違いありません。

                                                                                                   や・そね

<参考資料>

WEB

              ・NATUREダイジェスト日本版2018年12月号      

              ・ウィキペディア

 

雑誌     ・日経サイエンス2018年12月号、2019年1月号

氷の底に潜む忍者

オジさんの科学vol.035 2018年11月号

(2018年11月に配信した文章を、2020年4月に微修正しアーカイブしました)

 

 科学忍者はガッチャマン。少年忍者はフジ丸で、大食い忍者といえばカバ丸です。
 では、「ディープ忍者」って知ってますか。
 めくるめくディーブな世界に誘う忍者。新宿二丁目あたりに出没しそうです。マツコの知らない世界です。

 

 正式には「Deep NINJA」と言うらしい。先月、海洋研究開発機構JAMSTEC/ジャムステック)発のプレスリリーの中に、この文字を発見した。二丁目より永田町の匂いがする。隠密行動を常とする忍者の存在が漏れてたのだろうか。早速、当局は調査に入った。

  JAMSTECは5年も前にディープ忍者の存在を明らかにしてました。ホームページには「小型の海洋観測ロボット」と書いています。ロボット忍者のようです。

 あっさり正体が判っちゃいました。JAMSTECが持っている観測機器でした。「深海用プロファイリングフロート」と呼ばれ、海中の温度や塩分などを調査するんだそうです。ディープな海の世界に赴くのでした。水遁の術が得意なんですね。

 

f:id:ya-sone:20200425120215p:plain 全長210cm、重量約50kg。ほぼ円筒形の形をしており、水深4,000mまで潜れる。筒の上部に水温と塩分、圧力のセンサー、GPS搭載の通信用アンテナが伸びる。
 通常は海中を漂っているが、10日から1ヶ月に一度、水温と塩分を観測しながら浮上する。水面に顔を出すと衛星通信を使ってデータを送り、また潜る。

 

 派遣されているのは、南極の海だ。ぶつかって壊れないように、海面近くに氷があると察知し、深海に引き返す。海水はおよそ-2℃で凍るため、センサーが-1.79℃を感知すると回避する仕組みになっているそうだ。氷が溶けるまでデータを抱えて潜行する。

 冬の間は、海面が氷に覆われて、なかなか顔を出せない。海中で越冬するそうだ。

 ディープ忍者くんの部隊は18台(一説には14台)で構成される。忍者部隊越冬。

 

 世界中でフロートと呼ばれる海中を漂う観測機器は3,000台も稼働している。しかし、これまで深さ4,000mの水圧に耐えられるものは無かった。
 2011年に生まれたディープ忍者くんは、深海探査の術を身に付けた世界初のフロートだ。開発はJAMSTECと鶴見精機が共同でおこなった。2012年から長期観測に入っている。

 

 はやぶさは知っていたが、ディープ忍者くんのことは知らなかった。
 深海は、宇宙よりも謎が多いと言われる。130億光年先の天文現象を観ることはできるが、海の中は見えない。水は電磁波を通さないからだ。魚群探知機は音波を使って探る。はやぶさは撮影できたが、深海に居るディープ忍者くんは身を隠したままだ。

 

 その深い海の中に大きな流れがある。「深層流」という。 ディープ忍者くんがいる
南極や北極圏で沈み込んだ海水は、海底地形に沿って流れる。太平洋やインド洋で浮上すると、海流となって南極や北極圏にたどり着く。これを「海洋大循環」あるいは「海洋コンベアー」と呼ぶ。一周回るのに1,000~2,000年かかると言われている。
 通販などで売っている海洋深層水が本物なら、何百年も前の水を飲んでいることになる。
 ちなみに深層流の年齢を調べるのには、放射性炭素14による年代測定を使う。途中で空気などが供給されないため、炭素14は徐々に窒素14に変わり減っていく。

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  海洋大循環のスタート地点となる南極や北極圏では、海水からたくさんの氷がつくられる。海面が凍ると氷が断熱材になり、それ以上凍結が進まなくなる。

 ところが風や海流によって氷が素早く移動し、常に海面が冷やされるエリアがある。そこでは、氷がつくり続けられる。すると、取り残された塩分を多く含んだ海水は、どんどん重くなる。南極の海で、深く沈み込んだ水の塊を「南極底層水」と呼ぶ。

 

 沈み込む水には、もう一つの特徴がある。酸素をたくさん含んでいることだ。世界の深海への酸素供給は、すべて南極か北極圏でなされている。ここは、海洋大循環の心臓なのだ。

 

 今回JAMSTECは、ディープ忍者くんの潜入調査によって「南極底層水が急激に減少していることが判明」した、と発表した。塩分も薄くなっていることが判った。海洋大循環の心臓が弱っているのかも知れない。

 海は、大気の約1,000倍の熱貯蔵量がある。海洋大循環弱まると、地球の熱移動が減少する。暑さや寒さが極端になるとも言われる。今から1万1千年前にも海洋大循環が弱まり北半球は寒冷化したと言われている。
 深海への酸素供給が滞ると生態系への影響も懸念される。

  

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 忍者は密かに敵国に潜入し、情勢を探る。その情報が戦の勝敗を決することもある。
 南極の深海に潜ったディープ忍者くん。見えないけれど目が離せないでござるよ、ニンニン。

 

 

や・そね

 

<参考資料>

プレスリリース

・「国際深海用プロファイリングフロート『Deep NINJA』が南極海での『越冬』に成功」 独立行政法人海洋研究開発機構、株式会社鶴見精機  2013年12月19日

・「深海用プロファイリングフロート『Deep NINJA』による観測で南極底層水が急速に減少していることが判明」 国立研究開発法人海洋研究開発機構 2018年10月12日

・「潮の満ち引きと気候を繋ぐメカニズムをシミュレーションで解明」 国立研究開発法人海洋研究開発機構東京大学大学院理学系研究科、東京大学大気海洋研究所 2018年10月12日

 

WEB

・国立研究開発法人海洋研究開発機構ホームページ             

東京大学海洋アライアンスホームページ

 

書籍   

・『日本海』 蒲生俊敬 BLUE BACKS 2016年2月

群れるメリットが「社会」をつくる。

オジさんの科学vol.034 2018年10月号

(2018年10月に配信した文章を、2020年4月に修正しアーカイブしました)

 

 オジさんの仲間では、飲み会の声掛けをする、日付を調整する、居酒屋を予約する、盛上げるネタを考えてくるなどの役割分担があります。

 ハチやアリの社会でも、仲間が協力して様々な仕事を分担します。
 エサの調達係や、幼虫のベッドを整えたり体をきれいにするサービス部門、巣を守る防衛部隊などがあります。中にはキノコを栽培する農業担当や、アブラムシなどを家畜として飼育する係がいる場合もあります。

 ハチやアリの同じ巣の仲間は、みんな血縁関係にあります。社会を作るのは、親戚だからなのでしょうか。それとも役割分担できるからなのでしょうか。

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ホップ、ステップ、アワワワワ。

オジさんの科学vol.033 2018年9月号

(2018年9月に配信した文章を、2020年4月に微修正しアーカイブしました)

 

 子どもの頃は夏休みが終われば、夏も終りでした。東北の夏休みは短いのです。東京より1週間ほど前には、2学期が始まっていたと思います。だから8月31日の「今日で夏休みも終わり」というニュースに、いつも毒づいていました。
「もう、とっぐぬ終わってんべ」と。

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 9月に入りました。さすがに猛暑日は無いけど、まだまだ真夏日は続きます。熱帯夜だからエアコンは点けっぱなしです。
 スーパーの店頭には、まだトウモロコシがたく
さん並んでいます。冷やし中華もまだあります。まだまだ夏です。ということで今月は、まだ間に合うよねビール関連ネタです。

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ネッシーの不在証明

オジさんの科学vol.032 2018年8月号

(2018年8月に配信した文章を、2020年4月に微修正しアーカイブしました)

 

 一昨年、雪男のものと言われていた複数の毛のDNAが、12万年前の白クマさんと一致した話を紹介した。 そのネタ元のナショナルジオグラフィックが、またまたUMA(謎の未確認動物: Unidentified Mysterious Animal)を追い詰める研究の記事を掲載した。

 タイトルは「ネッシーチェックメイト!環境DNA分析を開始」。
 ネッシーとは、言わずと知れた世界でもっとも有名なUMA。英国スコットランドネス湖に住むと言われる。目撃証言から、中生代の海竜プレシオサウルスの生き残りではないかとの説もある。

 ちなみにプレシオサウルスの仲間は日本でも発見されている。フタバスズキリュウと呼ばれ、福島県いわき市で化石が発見された。20年以上前に化石発見の地近くの展示施設を、息子と見に行った。震災後も施設は残っているのだろうか。
ドラえもん のび太の恐竜」に出てくるのもこの仲間だ。

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ゆるゆるカガクの用語集「第二の地球」編

オジさんの科学vol.031 2018年7月号

(2018年7月に配信した文章を、2020年3月に微修正しアーカイブしました)

 

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 2018年7月2日に「宇宙における生命」を研究するアストロバイオロジーセンターより「第二の地球探しのための系外惑星観測装置IRDが稼働!」というニュースが発表された。

 自分探しの旅が流行ったこともあったが、これからは第二の地球探しだ。地球もちょっと住みにくくなってきた。移住先に宇宙なんてどうだろう。

 そこで今回は、移住先候補を探すうえで困らないように、いくつかの用語を説明しておきます。

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下手は伝染(うつ)るんです

オジさんの科学vol.030 2018年6月号

(2018年6月に配信した文章を、2020年3月に微修正しアーカイブしました)

 

 上手い人と一緒にゴルフすると、いいスコアが出ると言われる。ボクにも経験がある。上手い人たちは林の中でのボール探しやOBの打ち直しが少なく、リズムよく回れるから。上手い人たちに迷惑をかけちゃいけないからと、丁寧にラウンドするから。等々の理由が挙げられる。
 一方で下手の横好きのオジさん同士だと、いつまでたっても上達しない。
 オジさんたちの間に流行っているゴルフ下手菌の正体を解明しようと調べてみた。

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