オジさんの科学vol.129 2026年9月号
諸般の事情により、今月のオジさんの科学は、直近の科学トピックス7選をお送りいたします。気になったものがあれば、お読みください。なお文章は、Geminiさんにお手伝いいただきました。
ラットも「おいしい!」と鳴いていた? AIが突き止めたネズミの食の満足感

美味しいものを食べたとき、思わず「うまい!」と声が出てしまうのは人間だけではないかもしれません。福井大学などの研究チームが、ラット(実験用ネズミ)がチョコレートを食べている最中に「おいしい」という満足感を表す特別な鳴き声を上げていることを発見しました。
ラットは普段、人間の耳には聞こえないとても高い音(超音波)で鳴いてコミュニケーションをとっています。これまで「食べ物を期待してワクワクしている時」の声は知られていましたが、実際に「食べている最中」の声はあまり調べられていませんでした。
そこで研究チームがAI(人工知能)を使って鳴き声を分析したところ、チョコを待っている時と食べている時で声の種類が違うことを発見。食べている最中は少し低めの声で、山型の特徴的な音を出していました。
さらに、脳で快感を感じにくくする薬を投与するとこの鳴き声が減ったことから、単なる咀嚼音ではなく「おいしい!」という感動や満足感を表している可能性が高いことが分かりました。
この研究が進めば、声から動物の食の満足感を客観的に測れるようになったり、味覚障害や過食や拒食などといった食欲異常への対応を可能にするかもしれません。さらには、動物が声で何を伝えようとしているのかを読み解く新しい入り口になるかもしれないと研究チームは言っています。
小惑星リュウグウは、太陽系初期の姿を残す「長老」だった! 45.65億年以上前の天体の残骸と判明
日本の探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星「リュウグウ」の砂。北海道大学などの研究グループが詳しく調べたところ、リュウグウのもととなった天体が今から45.65億年以上も前に誕生していたことが分かりました。
研究チームは、試料に含まれる鉱物が作られた時期と温度を精密に分析。その結果、この鉱物が作られた時期から逆算すると、もとの天体は太陽系ができてからわずか200万年以内に誕生していたことが突き止められました。
実は、地球に落ちてくる他の多くの隕石のもとになった天体は、これより後にできています。つまりリュウグウのもととなった天体は、他の天体に先駆けて生まれた「超・初期世代」の天体だったのです。現在のリュウグウは、その太古の天体がぶつかって壊れ、破片が再集結してできた残骸だと考えられます。

今回の発見は、太陽系ができたばかりの数百万年間に、複数世代にわたって天体が生まれていたことを示しています。太陽系や地球がどのようにして形作られていったのか、その謎を解き明かす大きな手がかりになりそうです。
世界の少子化パターンはたった2つ! 教育費の補助が出生率回復の鍵か?

世界中で進む少子化ですが、理化学研究所や東北大学の研究者が世界237の国と地域の人口データを分析したところ、少子化の進み方には「2つの決まったルート」があることが分かりました。
ひとつは1950年以前の先進国に見られた、寿命の伸びとともに赤ちゃんの数が「緩やかに減るルート」。
もうひとつは1950年以降の先進国と発展途上国に見られる、寿命が延びると「急激に出生率が落ち込むルート」です。現在少子化が進む発展途上国は、前者のルートを経ずに急激なルートへと至っています。
この激しい少子化の鍵を握っていたのが「子どもの教育費」です。昔は「子どもに働いてもらう」考えが主流で緩やかな減少でしたが、現代は「人数を減らしてでも1人ひとりに高い教育を受けさせたい」と親の考えがシフトし、教育費の過熱が急速な少子化を引き起こしていると判明しました。
研究では、教育水準を保ったまま出生率を回復するには「家庭が負担する教育コストを下げること」が極めて有効だと示されました。教育費の負担軽減こそが、現代の少子化対策の大きな鍵になりそうです。
生成AIに反論されると、3割超の人が自分の判断を覆す? 神戸大が検証
正解のない倫理的な問題に対して自分で出した結論も、生成AIから真っ向から反論されると、3割以上の人が判断をガラリと変えてしまう。そんな興味深い研究結果を神戸大学のグループが発表しました。
研究では、暴走するトロッコの進路を変えて多数を助けるべきかといった「道徳的ジレンマ」の課題を使用。参加者に一度自分の意思で判断してもらった後、生成AI(ChatGPT)による真反対の反論を見せました。すると、全体の30%以上がAIの意見を受け入れ、自分の答えをひっくり返したのです。
分析によると、特に「自分の判断に自信がもてない時」や「選択が難しいと感じた時」ほどAIの説得を受け入れやすいことが分かりました。また、若年層に比べて高齢者や認知機能が低下している人ほど、よりAIの影響を受けやすい傾向がみられました。

生成AIは面倒な意思決定を助けてくれる便利な存在です。しかし、道徳や倫理のように正解がない問題では、言葉巧みな説得に人間が流されてしまう危険性も含んでいると言えそうです。
江戸時代の大阪庶民、歯石を調べたら大満足の食卓だった!
「天下の台所」と呼ばれた江戸時代の大阪ですが、庶民は実際に何を食べていたのでしょうか。九州大学などの研究チームが、JR大阪駅近くの「梅田墓」から見つかった江戸時代末期の庶民の骨から「歯石」を採取し最新技術で分析したところ、豊かな食生活が浮かび上がってきました。
昔の人は歯磨きをあまりしないため、歯石には食べたもののタンパク質がしっかり残っています。分析した結果、庶民層の歯石から高級魚とされるマダイをはじめ、サバやフグなど9種類の魚の成分を発見。さらに、大阪近海にはいないはずのサケも見つかり、遠くの地域から海運で届いた食材を庶民が買い求められていたことが判明しました。
それだけではありません。当時は仏教の影響で肉食が避けられていたとされますが、イノシシやシカなどの肉を食べた形跡や、地元の名産である綿実油(めんじつゆ)を使った形跡も確認されたのです。

比較的貧しかったとされる庶民でも、物流のハブだった大阪の恩恵を受け、バラエティ豊かな食事を楽しんでいたことが証明されました。
気温が4℃上がるとスキー場は全国で7か所に? 北海道大などが将来予測
ウインタースポーツを楽しむ人や観光業界にとって見過ごせない研究結果が発表されました。北海道大学などの研究チームが、地球温暖化の進行によって日本全国のスキー場がどうなるかを予測したところ、将来的に営業できるスキー場が激減する可能性が判明したのです。
全国349か所のスキー場を対象にシミュレーションを行ったところ、気候変動対策が進まず気温が4℃上昇した場合、天然雪のみで安定して全面的に営業できるスキー場は、全国でわずか7か所に。⼀部営業が可能なスキー場も26 か所に限られると予測されました。
仮に温暖化対策が進み、気温上昇が2℃にとどまった場合でも、全面的に営業できるのは53か所に。⼀部営業が可能なスキー場は108 か所と推定されました。比較的雪が残りやすい北海道や長野県などの標高が高い地域にスキー場が集約されていくと見られています。

このまま温暖化が進むと、パウダースノーを楽しめる場所が減るだけでなく、子どもたちが身近な地元のスキー場に触れる機会も奪われてしまいそうです。気候変動が私たちの冬の楽しみにも大きな影を落としています。
色あせない鮮やかさ! 金属風の光沢を出す画期的なナノ塗装技術
神戸大学の研究グループが、金属のような美しい輝きをもちながら、見る角度で色が変わりにくい新しい塗装技術を開発しました。
一般的な塗料は「色素や顔料」が光を吸収して色を表現しますが、日焼けなどで退色しやすいのが難点です。これに対し、シャボン玉や昆虫の羽のように、ナノサイズの微細構造が光を反射して発色する仕組みを「構造色」と呼びます。構造色は色素類を使わないため色あせない強みがありますが、従来は見る角度で虹色に変化したり、立体物に塗りにくかったりする課題がありました。
今回開発された技術は、極小のシリコン粒子を「一層だけ」規則正しく並べる手法です。粒子ひとつひとつが光と共鳴することで、金属風の光沢と鮮やかな発色を保ちつつ、どの角度から見ても色が変わりにくい安定感を持たせることに成功しました。

車の模型など複雑な曲面にも均一に塗ることができ、膜の重さは世界最軽量クラス。自動車や建築材料などの省資源で長持ちする次世代塗装として、大きな期待が寄せられています。
<参考資料>
「ラットはチョコを食べながら『おいしい』と鳴いていた ― 超音波の声からAIが聞き取った食の満足感 ―」 福井大学、名古屋大学、奈良県立医科大学プレスリリース 2026.09.07
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/upload_images/20260907_agr.pdf
「小惑星リュウグウは太陽系初期世代の天体の残骸~リュウグウのもととなった天体は45.65億年以上前に誕生~」北海道大学、茨城大学、海洋研究開発機構、東京科学大学、東京大学大学プレスリリース 2026.09.11
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/260911_pr2.pdf
「世界の少子化は二つの普遍的経路に沿って進む-教育コストの削減が出生率を回復させる可能性-」理化学研究所、東北大学プレスリリース 2026.07.17
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv_press20260717_web01_pathways.pdf
「生成AIの反論により3割超の人の道徳的判断が覆る 若年成人と高齢者を対象とした生成AIの説得効果に関する研究」神戸大学プレスリリース 2026.0818
https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/20260807-68192/
「「天下の台所」の食生活 ―古歯石プロテオミクスが明らかにした江戸時代の大阪庶民の多様な食事内容―」総合研究大学院大学、九州大学プレスリリース 2026.08.25
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/67146/26_0825_01.pdf
「気候変動でスキー場はどのぐらい減るのか? 〜気温4℃上昇で安定営業できるスキー場は全国で7か所に〜」北海道大学、森林総合研究所プレスリリース 2026.08.03
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/260803_pr.pdf
「金属のような光沢を与えるナノコーティング技術を開発ナノ粒子一層で金属光沢と虹色にならない構造色を実現」神戸大学プレスリリース2026.09.08


















