オジさんの科学

オジさんがオモシロそうだと思った科学ネタを、勝手にお裾分けします。

湖底に眠る宿場町

オジさんの科学vol.121 2026年1月号

湖底に眠る宿場町

 「宝の山よ」と謡われる福島県会津磐梯山」。麓に大学の研究所だったか合宿所だったがあった。そこに同期10人で寝泊まりしてフィールドワークの実習(巡検)をした。猪苗代スキー場にも何度か行った。子供が小学生だった頃に、家族で裏磐梯五色沼のハイキングコースを歩いたこともある。五色沼には、赤や青、緑などの様々な色の沼や小さな湖が点在する。

 

 海洋研究開発機構JAMSTEC/ジャムステック)などの研究チームは、昨年12月に「湖底に眠る宿場町を地球科学的手法で3D復元」したと発表しました。
 湖底に眠る宿場町とは、五色沼の隣にある「桧原湖」の底にある「桧原宿」のことです。まるでドラクエに出てくるような設定です。

 

 桧原湖五色沼は、1888年明治21年)の磐梯山の噴火によってできました。山がごっそりと崩れ去り(山体崩壊)、土石流で河川がせき止められ、つくられました。桧原湖は、約10㎢の細長い湖です。

 そして桧原宿は、この時に水没しました。江戸時代に会津若松と米沢を結んだ米沢街道の、会津領の国境近くに位置した宿場町でした。

 

 研究チームは、「マルチビーム音響測深」という技術を使い、130年以上も前に沈んだ湖底の街並みを3次元的に再現し、立体図を作成しました。船に搭載したソナーから音波を発射して、水深を測定します。多数の音波を扇状に放射することで、複雑な地形や水中の構造物を高精度・広範囲に計測しました。

 

 立体図と、水没前の明治初期に作られた地籍図を照合すると、町割り、道路、水路と思われる構造が見えました。

 現在、桧原湖の湖面には、頭を出した二の鳥居が見えます。その奥には一の鳥居と桧原山神社があります。一の鳥居と二の鳥居を結ぶ湖底には、参道があり、並木も残っていました。

 街道が、町の中で直角に折れ曲がっています。住宅地や農地、水路は、小規模な扇状地の地形と水の流れを巧みに利用してつくられていることも判りました。

 「近世、近代に栄えた宿場町が自然環境に適応した合理的設計を有していたことが明らかになりました」と研究チームは言っています。

 

 湖底では、堆積物が宿場町を覆っていました。そのため、一里塚や橋などの構造物は、よく確認できませんでした。今後は低周波を湖底に照射し、堆積物の様子や埋没した構造物の位置や規模をつかんでいくそうです。

 

 今回の発表は、2つの観点から興味深いと思います。

 一つは、「災害遺構」の調査という点です。自然災害の跡は、時と共に変わってゆきます。当然のことながら被災地は復旧されます。かつての災害の痕跡は、消え去る場合が少なくありません。

 過去の災害を記憶に留めて後世に伝えることで、防災・減災に役立てようと残すものを、災害遺構(被災遺構)と呼びます。

 

 建物、防潮堤などの構築物、断層や巨石などの自然物、石碑、写真、資料などの記録、活動、語り部、慰霊祭などの活動、などの総称です。 例えば、東日本大震災で残された陸前高田市の「奇跡の一本松」も災害遺構と言えます。仙台平野に並ぶ古墳群は、弥生時代東日本大震災級の津波が押し寄せてきた淵に作られた古代人の災害遺構だとする研究もあります。

 

 磐梯山噴火による犠牲者は477名にも上り、近代以降で日本最大級の火山被害と言われています。桧原宿も「災害遺構」と考えられます。

 

 二つ目は、「水中遺跡」の研究としての観点です。

 古い建物は取り壊され、新しく建て替えられます。かつての都も、今は畑になっていたりします。地上では、遺跡の保存よりも、そこに暮らす人々の生活が優先されます。

 一方で、湖底や海底などは、人の手が加わりません。また、酸素が少ないことから遺跡や遺物が当時のまま残っていることが多いといわれます。近年探索や再現、保存、分析などの技術が進歩し、これらを研究する「水中考古学」が発展しています。

 

 日本でも、様々な調査が行われています。日本初の水中遺跡は、諏訪湖の湖底にある「曽根遺跡」です。縄文時代の石の矢じりなどが発見されています。琵琶湖の湖底には100以上の遺跡が沈んでいると言われます。

 また、長崎県松浦市鷹島沖の海底では、740年以上前の元寇(げんこう)で沈没したモンゴル軍の軍船が3隻発見されました。これにより、これまで文献のみで語られてきたモンゴル軍の実態に迫ることが出来ると期待されています。

 今年に入り、戦艦大和と共に沈んだ駆逐艦「朝霜」らしきものが海底で発見された、というニュースもありました。

 

 世界6位の長さの海岸線を持ち、水と密接にかかわる日本には、数多くの水中遺跡や遺物があると考えられています。1万5千年ほど前までの最終氷期と呼ばれる時代、海水面は今より100m以上低いところにありました。その時代の人々の村や生活の跡が、きっと海中に残されているはずです。

 

 水中探索というと、沈没船探しのトレジャーハンターを思い浮かべるかもしれない。しかしそれだけではない。水の底には、人類の宝が眠っている。

 

<参考資料>

「湖底に眠る宿場町を地球科学的手法で3D復元 ―1888年磐梯山噴火で沈んだ「桧原宿」を科学が甦らせる―」2025年12月22日 海洋研究開発機構京都大学東海大学北塩原村高知大学プレスリリース

「水中遺跡ハンドブック」 2022年3月 文化庁文化財第二課

 

斎野裕彦2024「仙台平野における 弥生津波伝承と古墳前期首長墳の築造位置」  第3回 日本災害・防災考古学会研究会資料・予稿集 142-157, 2024-09-24

 

ウマクイズ解答編


あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

オジさんの科学2026年新春特別号ウマクイズの答えです。


第1問

ヒトとウマには、他の動物にはない共通点があります。それは、以下のうちどれでしょう。

1. 一夫一妻制 2. 全身で汗をかく 3.瞳孔が丸い

答え:2

ウマもヒトも数少ない全身で汗をかく動物です。それによって体温を低下させて長時間の運動を可能にします。ウマの汗は、大量にかくと石鹸の様に泡立ちます。ウマは、リーダーのオスと複数のメスで群れを作ります。ウマの瞳孔は横長です。

 

第2問

英国ウェールズ地方で毎年6月に開催される「人対馬ラソン」。数百人と数十頭が21~24マイル(約34~39km)の山岳路で競います。これまで実施された44大会の優勝回数は以下のうちどれでしょう。

1.馬の全勝 2. 馬の39勝5敗 3.馬の25勝19敗

答え:2

2004年第25回大会で初めて人が勝利しました。その後2007年、2022年、2023年、2025年に人が勝利しています。馬はすごいが、人も結構すごい。両者とも全身で発汗できるため体温維持が図れます。そのため長距離移動に優れています。

 

第3問

鉄腕アトムは10万馬力です。さて10万馬力とは、F1マシン何台分の出力にあたる?

 1.F1マシンのエンジンとほぼ同じ(1台分) 2.約10台分 3.約100台分

答え:3

現在のF1マシンのエンジン馬力は、ハイブリッドシステムを含めて約1,000馬力です。10万馬力は、この約100台分に相当します。

 

第4問

オリオン座の三つ星の下にある真っ黒な「馬頭星雲」。有名な暗黒星雲です。これは何の影響で黒く見えるのでしょうか。

 1.暗黒エネルギー(ダークエネルギー)2.暗黒物質ダークマター) 3.塵やガス 

答え:3

非常に温度の低い塵やガスが後方の光を遮っているため、真黒に見えます。ここは、星の赤ちゃんが生まれる場所でもあります。太陽も46億年前にどこかの暗黒星雲の中で生まれました。

 

第5問

ウマは奇蹄目というグループに分類されます。奇蹄目では無い、仲間外れの動物は?

1.カピバラ 2. サイ 3. バク

答え:1

奇蹄目は、奇数の蹄を持つ動物。ウマとサイとバクの仲間が、これに属しています。偶数の蹄を持つウシやラクダ、カバ、シカ、ヤギ、キリン、イノシシの仲間、そしてクジラの仲間などはクジラ偶蹄目というグループになります。

暗黒物質が尻尾を出した?

オジさんの科学vol.120 2025年12月号

暗黒物質が尻尾を出した?

 


 朝ドラの『ばけばけ』が面白い。トキ役の高石あかりが上手い。『御上先生』では、不正入学した女生徒をシリアスに演じたが、コメディーの才能もあるようだ。トキは、『怪談』を書いた小泉八雲の妻がモデル。彼女は、見えないナニカや得体の知れないモノたちについて語った。

 「暗黒物質ダークマター)」も確かに存在するのだが、全く見えない。正体も判っていない。

 

 ところが、最近「暗黒物質がついに見えた!?」というプレスリリースが出ました。11月26日に東京大学は、大学院理学系研究科の戸谷友則教授が暗黒物質のシグナルと考えられるガンマ線を捉えた、と発表しました。

 

 戸谷教授は、NASAガンマ線観測衛星「フェルミ」の15年分のデータを解析しました。その結果、私たちの「天の川銀河」の中心をぼんやりと球状に取り囲んだ「ハロー」と呼ばれる領域から、ガンマ線が放射されていることが判りました。それが、暗黒物質に起因するものかもしれないとのことです。「これが事実であれば、人類は初めて暗黒物質を『見た』ことになる」とリリースは言っています。

 

 暗黒物質は、私たちや星々を形作る「通常の物質」とは反応せず、すり抜けてしまいます。また光や電磁波も発せず、反応もしないため観測することが出来ません。しかし質量を持っているため、重力によって通常の物質に影響を与えます。天体の運動や光の屈折に関与することで、存在が知られることになりました。

※詳しくは、オジさんの科学「暗黒物質はじめて物語」の、その1とその2をご覧ください。

https://note.com/kosuzu_kouchan/n/na419576fed05                 https://note.com/kosuzu_kouchan/n/n3d7d411ac7b4


 暗黒物質の総量は宇宙の物質の約85%を占め、通常の物質の5倍以上あると推定されています。居ることは判っているが、誰だかわからない。遊んでいる子供のまわりに座敷童が5人いるようなもの。

 暗黒物質が無ければ、宇宙全体で重力が足りないために、物質が集まらずに星は出来にくくなり、生まれた星々も散り散りになっていたと考えられています。そしてほぼ確実に生命も誕生していなかったでしょう。座敷童がもたらしてくれる幸せのようなものです。

 

 暗黒物質には、様々な候補があります。その中の有力な候補として、未知の素粒子「WIMP(ウィンプ)」があります。WIMP同士が衝突し消滅(対消滅)するとガンマ線を出します。

 ハローの領域にぼんやり広がった球状のガンマ線放射は、想定される暗黒物質の分布とよく一致していました。

 


 しかし、パルサーと呼ばれる中性子星超新星の残骸などからも、強力なガンマ線が発せられます。その他にもブラックホールや星間物質、そして太陽の様な恒星からも放出されています。今回の研究では、これら既に知られている発生源からのノイズを、丁寧に取り除きました。

 解析は、ガンマ線を発する多くの天体が存在する天の川銀河の中心部を除いて行いました。図の真ん中にあるグレーの帯が除いた領域です。

 これが今回の研究の肝だったようです。ガンマ線の強い領域を隠すことによって、球状の放射が浮かび上がってきました。明るすぎると幽霊も出てきません。

 

 これまでも、暗黒物質が多く存在する天の川銀河の中心部からのガンマ線を使った研究があったそうです。しかし、そこにはたくさんの天体があり、ノイズも多いため、本当に暗黒物質によるガンマ線かどうか、と反論されたそうです。

 

 また、今回解析されたガンマ線のエネルギー領域は、WIMPが対消滅する時に出すガンマ線にとてもよく似ていました。特定の領域で非常に強く、それよりエネルギーが低かったり高かったりすると急激に弱くなりました。一般に、天体から発せられるガンマ線は様々なエネルギーで比較的均等に放射され、このような特定の領域のみで強くなることは無いそうです。

 

 このガンマ線の強さから、WIMP粒子の質量も推定されました。

 これまでの暗黒物質候補の粒子の質量は、最小から最大まで10の90乗もの幅がありました。WIMPだけでも100倍(10の2乗)以上もの範囲が想定されていました。

 今回の結果は、陽子の500倍程度の質量をもつWIMPの対消滅から予想されるガンマ線と、よく合致したそうです。


 これまで暗黒物質を検出するために様々な観測や実験が行われてきました。極端に言うと下手な鉄砲を数打ってきた様なものかもしれません。

 今回の研究によって暗黒物質の尻尾を掴めたのかもしれません。化けの皮を剥がすには、今後さらなる研究や検証により、これが本当に暗黒物質からのガンマ線であることを立証することが重要です。

 

 すでに世界中の研究者が、今回の研究の検証を始めているそうです。また、理論的な補強も発表され始めています。

 リリースでは、「今後の検証で、本当に暗黒物質からのガンマ線であることが確定すれば、天文学・物理学における最大の難問の一つがついに解明されることになります」と言っています。

 

暗黒物質の正体見たり」と本当に言える日が待ち遠しい。

や・そね

 

<参考資料>

暗黒物質がついに見えた!? ー天の川銀河のハローから高エネルギーガンマ線放射を発見ー」

 2025年11月26日 東京大学プレスリリース

 

日経サイエンス2025年7月号「特集 どうなる暗黒物質 有力粒子WIMPが見つからないダークホースはどこにいる」

 

東洋経済オンライン2025年12月3日「ついに!東大教授がダークマターの観測に成功か?【約5分で読める】宇宙の謎解明の期待かかる研究成果を東大生が解説」

 

 

時を超える香り

オジさんの科学vol.119 2025年11月号

時を超える香り

 

 オジさんの人生で一番記憶に残る匂いは、手術室に漂ったステーキの香りだ。!???。お尻の外科手術で患部を焼いて処置した時の匂いだった。香ばしくて、ヨダレが出そうないい香りだった。手術の後、そのまま某ビール会社へプレゼンに行った。ディレクターが休ませてくれなかったのだ。座るのが辛かった。

 

 先日は、天下一の香りに誘われた。出かけた先は武道会、ではなく上野の森美術館の「正倉院 THE SHOW」。今年7月宮内庁は、天下一の名香と言われる「蘭奢待(らんじゃたい)」の香りの再現に成功した、と発表した。その香りを嗅ぐことが出来る、と謳っていた。


 蘭奢待は、天皇の許可なくしては扉を開けることすらできない正倉院正倉に収蔵されています。ご存じの通り、正倉院は、1200年以上も前に聖武天皇が没した際に、その遺愛品を納めるために、光明皇后が造った宝物庫です。

 

 蘭奢待とは、香木「黄熟香(おうじゅくこう)」の通称です。長さ156cm、重さは11.6kg。表面が黒光りし、ぽっかりと空洞がある朽ちた木の幹には、切り取った跡があります。そこに貼られた3枚の紙片には、誰が切り取ったのかが記されています。足利義政織田信長、そして明治天皇

 

 室町時代から続く香道の家元は、足利義政から賜ったと言われる蘭奢待の欠片を代々家宝として守っているそうです。香道は、室町時代から江戸時代にかけて盛んになりました。しかし、一握りの権力者たちしか触れることが出来ず、庶民にとっては伝説の香りだったようです。「死ぬまでになんとしてでも一度は香りを聞いてみたい」とまで言われたそうです。

 


 その香りは少しずつ失われているそうです。これを残そうと、宮内庁は2024年10月に調査を開始しました。「どんな植物なのか」「いつできたのか」、そして「香りの正体は何なのか」。

 宮内庁は、タイムふろしきを持っていなかったので、科学的なアプローチを試みました。木材組織学や考古年代学の専門家、香料会社の成分分析の研究員や調香師が参加しました。分析には、移動などの際に落ちた欠片が使われました。

 

 樹脂で固めた欠片を薄くスライスし、光学顕微鏡で組織を観察しました。さらに太陽光の100億倍の明るさがつくれる大型放射光施設「SPring-8」のX線を使って調べました。

 その結果、ジンチョウゲ科の樹木と判明しました。この樹木の一部は、沈香(じんこう)と呼ばれる高級香木の原料となり、特に高品質のものは伽羅(きゃら)と呼ばれます。しかし、未だに蘭奢待を超える香木は無いそうです。

 この樹木は、傷や虫食いなどの被害を受けると、細菌などの微生物から自らを守るために樹脂をつくります。この樹脂が香りの素になります。

 

 蘭奢待の伝来を記した史料はありません。年代を調べるために、加速器質量分析装置を使い炭素の同位体比を測定しました。その結果、蘭奢待の原木は、正倉院が出来た数十年後に倒木あるいは伐採された、と判りました。

 

 匂いの気体を分離して分析するガスクロマトグラフィーという手法を使うと、300~400の成分が含まれていることが判かりました。同時に、調香師が各成分を嗅ぎ分けることで照合しました。担当した調香師は、1,000種類に及ぶ香りの原料を記憶しているそうです。この分析結果を基に、蘭奢待の香りを再現しました。

 

 正倉院 THE SHOWでは、正倉院の宝物を後世に伝えるために映像と「再現模造」で紹介しています。宝物をもう一つ作るという考えの下で、材料や構造、技法までも忠実に復元するために、人間国宝や伝統技術保持者の方々の手によってつくられていました。

 素晴らしい作品の数々も、もちろんしっかり堪能しながら、蘭奢待のゾーンに突入しました。真ん中にドーンと蘭奢待。本物ではありません。レプリカです。大河ドラマ麒麟がくる』の撮影に使われたものだそうです。


 その一室の壁に沿って小さな徳利にお椀をかぶせたようなガラス容器が並んでいました。小徳利の中に再現した匂いの素が入っていて、持ち上げたお椀に漂う香りを嗅ぎました。

 

 千年を超えて香り続ける蘭奢待。仄かに甘くスパイシーな漢方薬の様な香りがした。すっきりしているが、複雑で奥深く、微か。不快ではないが、驚くほどいい香りでもなかった。ただ「あぁ、この微妙な感じは日本人が好きそうかも」と思えた。信長は、どう感じたのだろう。

 

 匂いの好みには、文化や風土、歴史が反映される気がする。一方で体験や記憶に結び付いたとても個人的なモノとも思える。夏のプールの匂い、おばあちゃんの家のお線香の匂い、あの喫茶店のコーヒーの香り、お尻ステーキの香りといったように・・・。

や・そね

 

<参考資料>

 「権力者をとりこにした香木『蘭奢待』 香り成分や年代判明 宮内庁正倉院事務局」(2025年9月1日)科学技術振興機構Science Portalニュース 

「信長も求めた名香 蘭奢待の香りを再現」日経サイエンス 2025年12月号 

「フロンティア 蘭奢待(らんじゃたい)天下無双の香りの謎」(2025年6月7日放送)NHK

今年はシマウシ

オジさんの科学vol.118 2025年10月号

今年はシマウシ

 

 オジさんが横縞のシャツを着ても、強面のラガーマンには見えない。しかし、ウシを縞々にすると、近寄り難くなるらしい。すくなくともハエ君たちは。

 

 今年のノーベル賞は、生理学医学賞を坂口さんが、化学賞を北川さんが受賞した。

 先んじて、9月にイグノーベル賞の発表があった。こちらも、農研機構や京大などのチームによる研究が生物学賞を受賞した。タイトルは、「シマウマのような縞模様を描かれた⽜はハエに刺されないようになる」。この論文は、2019年に学術誌『PLOS ONE』に掲載された。

 

 ウシは始終尻尾を振っていますよね。あれはハエを追い払うためです。寄って来るのは吸血バエと言われる類。刺されれば、ウシだって痛いし痒い。ハエのウシ活を制限できれば、ウシのストレスも軽減されるはずです。

 

「シマウマが縞々なのは、防虫効果のためである」と言う説が有力視されており、2014年『Nature Communications』にも発表されていました。研究チームは、ここに目を付けました。

 ⿊⽑に⽩いスプレーで幅5cm程の縞模様をつけた「シマウシ」、何もしない「通常の⿊ウシ」、黒毛に⿊いスプレーで縞模様を描いた「クロ黒ウシ」を用意。30分間に寄って来るハエの数をカウントしました。

 通常の黒ウシとクロ黒ウシは同程度でしたが、シマウシはその半分以下しか寄ってきませんでした。

 

 縞々をハエが嫌がる理由は判っていないようです。しかし、コストがかからず、殺虫剤を使うより環境への影響が少なく、ウシへの負荷も小さい。シマウシは、ウシにも環境にも畜産業へもやさしいみたいです。

 

 ところで、イグノーベル(ignobel)賞とは、ノーベル(nobel)賞のパロディ。「崇高さに欠ける」と言う意味の「ignoble」をもじったものです。「人々を笑わせ、そして考えさせた業績」に与えられます。毎年1万点近くの研究が推薦され、その中から10点が選ばれます。

 しかし、おふざけを対象に選んでいるのではありません。『Nature』や『Science』に掲載された研究もたくさんあります。

 

 『風変わりな研究の年報 (Annals of Improbable Research)』のマーク・エイブラハムズ編集長が、1991年に立ち上げました。

 選定するのは、イグノーベル賞委員会。科学雑誌の編集者、科学ジャーナリストおよび多数の科学者で構成されます。中には、ノーベル賞の受賞者もいるようです。世界中の誰もが推薦することができ、自薦もあり。でも、自薦の場合はほぼ選ばれないと言う話もあるようです。千兵衛さんが、「アラレちゃんの発明」を推薦してもダメみたいです。

 

 ノーベル賞では「メダル」と「賞金」が授与されますが、イグノーベル賞では「賞状」と「記念品」がもらえます。賞状は、コピー。でも数人のノーベル賞受賞者のサインが入っているそうです。今年の記念品は、ヘンテコな胃のオブジェでした。去年までは、貨幣価値ゼロの10兆ジンバブエドルが賞金として贈られていましたが、今年はウェットティッシュに変わりました。これらは、ノーベル賞受賞者より授与されます。授賞式は、その他にも演出が盛々。 授賞式の様子を見たい方は、こちらをどうぞ。字幕版です。

 https://live.nicovideo.jp/watch/lv348433668

 

 日本の研究は、19年連続で計31回も受賞しています。そこでオジさんの記憶に残っている受賞研究をいくつか紹介してみたいと思います。

 

 2002年に平和賞を受賞したのが「⽝語翻訳機『バウリンガル』を開発」。タカラから発売された後は、どうなったのかしら。

 

 2008年認知科学賞の「単細胞⽣物の真正粘菌が迷路の最短経路を⾒つけることを発⾒」と、2010年の交通計画賞「鉄道などのインフラ整備に真正粘菌の『知恵』が役⽴つことを研究」は、同じ研究者のチームです。単細胞生物の「粘菌」も知性的にふるまうことを示しました。

 

 2012年の音響賞、「おしゃべりを続ける⼈を邪魔する装置『スピーチ・ジャマー』開発」。指向性マイクと指向性スピーカーを組合わせ、相手の声をちょっとだけ遅らせて発し、混乱させる装置。アプリがあるようです。

 

 2014年の物理学賞、「バナナの⽪の滑りやすさを証明」。バナナを踏むと地面との摩擦係数が約1/6になるそうです。イヤミは大げさではなかったんですね。ちなみにマリオカートは??みたいです。 

 

 2016年知覚賞の「『股のぞき』をすると、距離を正確につかみにくいことを証明」。天橋立の股のぞき効果を証明しました。

 

 2017年の生物学賞は「ブラジルに⽣息する昆⾍の雌に、雄のような形状の性器があることを発⾒」。性器の大発見と言われました。洞窟昆虫が専門の授賞者たちが、洞窟からのビデオレターで授賞式に参加していました。

 

 2023年の栄養学賞は「電気を通した箸やストローで飲⾷物の味を変えることを提案」。電気刺激で塩味を感じさせ、減塩を促進させる装置。高血圧対策に有効と言われ、商品化が進んでいるはずです。

 

 身近な疑問の解明も受賞につながる、それがイグノーベル賞ヒョウ柄の服を着たオバちゃんの視覚効果なんてどうだろうか。いつかはヒョウオバ。

                                                                                                や・そね

 

<参考資料>

26 Mar 2020: Kojima T, Oishi K, Matsubara Y, Uchiyama Y, Fukushima Y, et al. (2020) Correction: Cows painted with zebralike striping can avoid biting fly attack. PLOS ONE 15(3): e0231183. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0231183 | View

correction

 

兒嶋, 朋貴. 放牧地の環境条件に合わせた和⽜放牧管理に関する研究. 京都⼤学, 2022, 博⼠(農学), ⼄第13506号

http://hdl.handle.net/2433/277295

 

ナショナルジオグラフィックNews2014年4月7日「シマウマの縞の理由、防⾍説が最有⼒︖」

 

五十嵐杏南『“イグノーベル賞”研究40講 ヘンな科学』総合法令出版

 

「2025年『第35回イグノーベル賞』10賞全部解説!彩恵りりLab BRAINS

https://lab-brains.as-1.co.jp/enjoy-learn/2025/09/79084/

 

nippon.com【イグ・ノーベル賞】⽩⿊模様の「シマウシ」に⾍よけ効果 ⽇本⼈19年連続受賞

https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02550/

 

ニコニコニュース イグノーベル賞授賞式2025

https://live.nicovideo.jp/watch/lv348433668

 

イグノーベル賞2025youtube公式配信

https://www.youtube.com/watch?v=P8fhpgn3t88

 

第9惑星を探せ

オジさんの科学vol.117 2025年9月号

第9惑星を探せ

 

 「三陸海岸などにみられる、海岸線が入り組んだ地形を何という?」。クイズ番組を観ていたオジさんは、すかさず「リアス式海岸」と声を上げた。ブブー。答えは「リアス海岸」。源頼朝鎌倉幕府を作ったのは、1192(イイクニ)年ではないらしい。今は1185年なのだそうだ。オジさんの時代の常識は、ずいぶんと変わっているようだ。

 太陽系の惑星も、水金地火木土天海冥と覚えた。「いやいや、今は冥王星海王星の軌道の内側に入っているから土天冥海だよ」なんて会話をしたこともあった。どちらにしても9つ1セットだった。ところが冥王星が惑星からはずれてしまった。まるで島村ジョーはサイボーグ戦士ではない、と言われたようなものだ。

 

 今月も引き続き太陽系外縁部の話です。(2025年8月号 「『オオルリ流星群』を読んで」を思い出してね)

 冥王星が発見される前には、海王星の軌道がそれまで知られていた事実からは説明がつかず、未知の「惑星X」の重力が影響している、と考えられていました。1930年に冥王星が発見されると、惑星Xが見つかったと話題になりました。

 


しかし研究が進むと、冥王星は月よりもかなり小さな天体で、質量も海王星の1/8,000ほどしかないことが判ってきました。しかも実は海王星の軌道が、惑星Xを想定するほど変じゃないこともわかりました。冥王星の発見は、偶然の産物だったのです。

 

 でも、一度9番目の惑星と認められた冥王星は、長らくその地位を保ち続けていました。ところが2005年、冥王星を含む太陽系外縁部の「エッジワース・カイパーベルト」に新天体「エリス」が発見されました。

 リリスがファーストインパクトを引き起こしたように、エリスも天文学界隈に衝撃を与えました。

 エリスは、冥王星より大きいと見積もられました。そこでエリスを10番目の惑星とするかどうかが議論となりました。

 

 かつて、火星と木星の間に「セレス」と呼ばれる天体が発見されました。一時は惑星とされましたが、翌年以降よく似た軌道を持つ天体が次々と発見され、これらはまとめて小惑星と呼ばれることになりました。

 冥王星も数あるカイパーベルト天体の一つと考えることが出来るのではないか。2006年8月、国際天文学連合の総会は、惑星の新しい定義を採択しました。

 

 惑星の定義は、①太陽の周りを回り②十分な質量をもって球形を維持でき③軌道の周辺のほかの天体を一掃した天体、とされました。

 その結果、冥王星は③の条件を満たせないために「準惑星」となりました。小惑星だったセレスも、①と②は満たすので準惑星になっています。

 

 それから10年経った2016年、学術誌『アストロノミカル・ジャーナル』に「カイパーベルトの天体の奇妙な軌道に、未知の大きな惑星の重力が作用している形跡が見てとれる」と発表されました。ナショナルジオグラフィックニュースでも「太陽系に第9惑星の痕跡見つかる」と報じられました。

 

 その根拠は、以下の様なものでした。

 太陽系の8つの惑星はほぼ円形の軌道で、同じ平面状を回っています。レコード盤の上に載っているようなものです。

 海王星冥王星の更にずっと外側の太陽系外縁部で、惑星とは異なる奇妙な軌道を描くいくつかの小天体が見つかりました。極端な楕円で、惑星が回る面から約20°傾いて回っています。しかも皆似たような軌道に偏っていました。

 

 これは奇妙だという事でシミュレーションしてみると、これらの小天体の軌道に影響を与える未知の惑星の存在が示唆されたそうです。地球の5~10倍の質量を持ち、奇妙な小天体たちの軌道の反対側を公転していると予測されました。宇宙の深淵に潜み、陰で小天体たちを重力によって操るラスボス、第9惑星です。

 

 それから約10年。今年、日経サイエンスの2025年5月号に「発見なるか太陽系の新惑星 辺境に巨大天体?積み上がる傍証」という見出しで記事が掲載され、「太陽系に未知の惑星が隠れている可能性が大きい」と取り上げられました。

 

 そんな中、今年7月に国立天文台などの国際研究チームは、「すばる望遠鏡による観測で、太陽系外縁部を特異な軌道で公転する天体を新たに発⾒した」と発表しました。

 さて皆さん、「新惑星が発見されたのか」と思ったでしょ。でもそんなことがあったら大ニュースです。違うんだなぁ。

 発見された天体「アンモナイト」は、奇妙な小天体たちの反対側を回っていました。2016年の発表で予想された未知の惑星の軌道とよく似ていました。しかし直径は、220~380kmと想定され、小天体たちと同じかそれより小さかったのです。さらに約45億年も安定した軌道を回り続けていることが判りました。

 

 これらのことから、研究チームは「アンモナイトの発見は、第9惑星の可能性を低くした」と言っています。

 小天体たちが、偏って見えたのはたまたま。夜中に懐中電灯をつけたら、天井にまっくろくろすけがかたまって見えた。まっくろくろすけは天井が好きなんだ、と思いながら部屋の明かりをつけたらそこかしこに居た。という事かもしれません。

 

 アンモナイトは、日本のすばる望遠鏡の超広視野焦点カメラによって発見されました。すばるは世界最大級の広い視野をもっていました。

 そして今年6月に、すばるの5倍もの視野を持つ望遠鏡が稼働しました。南米チリのベラ・ルービン天文台です。(ベラ・ルービンは、暗黒物質の存在を示した女性科学者の名前です。2022年9月号 「暗黒物質はじめて物語 その1 どうやって発見されたのか」を見てね)

 この広い視野を用いて全天をくまなく観測します。これによって、カイパーベルト天体の数は、現在の10倍に増えるとの予想もあります。第9惑星が存在するか否かは、数年で決着するかも知れません。

 

 第9惑星が発見され、ルービンの名前がついたら「水金地火木土天海ルー」となる。

 

 

 

 

 

<参考資料>

すばる望遠鏡が見つけた太陽系の「化石」 2025年7月14日 すばる望遠鏡プレスリリース

すばる望遠鏡が見つけた太陽系の「化石」 2025年7月15日  国⽴天⽂台、台湾 中央研究院天⽂及天⽂物理研究所、近畿⼤学、千葉⼯業⼤学、神⼾⼤学、⽇本スペースガード協会プレスリリース

すばる望遠鏡が見つけた太陽系の「化石」 2025年7月15日 千葉工業大学惑星探査研究センタープレスリリース 

日経サイエンス2007年4月号「惑星って何だ? 冥王星騒動の顛末」

日経サイエンス2025年5月号「発見なるかプラネット・ナイン」

ナショナルジオグラフィックNews2016年1月21日「太陽系に第9惑星の証拠見つかる」

 

 

 

 

『オオルリ流星群』を読んで

オジさんの科学vol.116 2025年8月号

 

オオルリ流星群』を読んで

 

 夏休みの宿題は、無くなる傾向にあるそうだ。オジさんが小中学生だった頃は、ドリルや絵日記、図画工作、自由研究そして読書感想文と盛りだくさんだった。

 そこで今回は、読書感想文になぞらえて、一冊の本を紹介しながら科学のトピックを話してみたい。

 

 本のタイトルは『オオルリ流星群』。

 舞台は、神奈川県西部に位置する秦野市。オジさんのホームゴルフ場もここにある。丹沢の南斜面に位置し、山腹にあるコースからは相模湾まで一望できる。

 


 秦野には、地元の高校を卒業した同級生4人が住んでいる。3年の夏に、学園祭に向けて1万個の空き缶を使って校舎の壁面を覆うタペストリーを作った仲間だ。今は45歳になっている。タペストリーには丹沢に棲む青い鳥「オオルリ」が描かれていた。

 久志は、町の薬屋だがやる気のない3代目。千佳は、公立中学の理科教師で科学部の幽霊副顧問。修は、東京の番組制作会社を辞めて戻ってきた。和也は、実家に引きこもりっている。皆、ミドルエイジ・クライシス(中年の危機)に直面していた。

 

 物語は、高校卒業以来28年間音信不通になっていた彗子(けいこ)が、秦野に現れたところから始まる。彗子は国立天文台の研究員をクビになっていた。4人と共にタペストリーを作った仲間で、「スイ子」と呼ばれる。

 そしてタペストリーづくりには、製作を提案した6人目のメンバーがいた。しかし途中で仲間を抜け、浪人中に不慮の死を遂げた。

 

 彗子の目的は、私設の天文台を作ることだった。国立天文台では、ハワイのすばる望遠鏡を使って「太陽系のはて」の研究をしてきた。そして、この研究を手持ちの市販の望遠鏡(口径28cm)で続けようと考えていた。しかもほんのわずかしかない資金で。かつての同級生たちは、手伝う事になる。

 やっと見つけた天文台候補地の地主に、プレゼンを行うことになった。

 

 壁にノートパソコンの画面が映し出された。「冥王星を含む太陽系外縁部を『エッジワース・カイパーベルト』といいます」と彗子は説明する。そこには、微惑星と呼ばれる46億年前にできた原始太陽系の欠片が残っていると考えられている。しかし、小さすぎてすばる望遠鏡の様な最先端の巨大望遠鏡でもその存在は確認できていなかった。

 これを探し出そうというのだ。テーマは「掩蔽(えんぺい)を利用した微小カイパーベルト天体の探索」。

 

 壁に向かって千佳がレーザーポインターの赤い光を当てる。彗子はテニスボールを使い、その光をさえぎってみせた。「これが、掩蔽です」。

 「日食と同じ原理だよな」と修。

 「そう。太陽を月が隠すように、恒星をカイパーベルト天体が隠す。だから『星食』と言ってもいい」。これを観測しようという試みだ、と彗子は話した。

 

 著者の伊予原新さんは、元々は地球惑星科学の研究者。理学部の助教をしている時にミステリーのトリックを思いつき江戸川乱歩賞に応募したところ最終選考に残ってしまったそうだ。横溝正史賞を受賞し、作家デビュー。今年172回直木賞を受賞した。

 

 彗子が目指す観測には、モデルとなった研究があります。2019年、京都大学を中心とする研究グループが『史上初、太陽系の果てに極めて⼩さな始原天体を発⾒―宮古島の⼩さな望遠鏡が太陽系誕⽣の歴史と彗星の起源を明らかに―』と発表しました。

 

 研究グループは、彗子と同じ市販の口径28cmの望遠鏡を使い観測しました。この望遠鏡には、星空を動画で撮影できるCMOSビデオカメラを取り付けられました。彗子も同じです。かかった費用は、約350万円。競合する米国などの国際掩蔽観測計画の開発費は、約10億円だそうです。

 

 星が多い天の川を、カイパーベルト天体の数が多いと予想される黄道(天球上の見かけの太陽の通り道、つまり太陽を回る地球などの惑星が公転する面)が横切る付近、いて座の領域にある約2,000個の恒星を約60時間観測し、得られた動画データを解析しました。

 

 その結果、12等星が約0.2秒間だけ最大約80%減光していることが発見されました。詳細な解析の結果、この明るさの変化は、地球から約50億km離れた半径およそ1.3kmのカイパーベルト天体による掩蔽によって説明できることが判りました。

 ちなみに地球と太陽の距離は、約1億5000万km。また、これまで直接観測によって確認できていた最小クラスのカイパーベルト天体は長径およそ30kmだそうです。カイパーベルト天体は、彗星の起源になっていると考えられています。

 

 彗子は星好きの父親が付けた名前だ。1972年10月8日の夜、多くの日本人ともに彗子の父も空を見上げていた。「ジャコビニ流星群」を見ようと。ジャコビニ流星群は、1933年にはヨーロッパで、1946年にはアメリカで1時間当たり数千から数万個の流星が観測された。そしてこの年は、好条件になる日本でも大規模な流星雨がみられると予想されていた。


 残念ながら流星群が空振りに終わった9日の未明に、彗子は生まれた。流星のもとは、カイパーベルトから来た彗星が放出した塵。「彗星が流星群の代わりに運んでくれた子」と名付けられた。

 物語は、5人が2017年のジャコビニ流星群を観測するシーンで終わる。

 

 再び仲間たちと過ごす中で、久志は気づく。45歳になった自分たちは、いま星食の時なのかもしれない。道しるべとして頼りにしてきた星が見えなくなって迷っている。しかし、「星食」はやがて終わる、と。

 これは、中年5人が新たな一歩を踏み出そうとする物語なのだ。

 

 1972年10月8日の夜、中学生だったオジさんも、宮教大の講義棟の屋上で仙台天文同好会の人たちと共に、ジャコビニ流星群の出現を待っていた。しかし、初めての完徹にもかかわらず流星は見られなかった。星食どころか、全天の雲が一晩中星を覆い隠していた。あれから50年以上経つが・・・・。

 

や・そね

 

 

<参考資料>

オオルリ流星群』 伊予原新 角川文庫

「史上初、太陽系の果てに極めて⼩さな始原天体を発⾒―宮古島の⼩さな望遠鏡が太陽系誕⽣の歴史と彗星の起源を明らかに―」(2019年1月29日) 国立天文台京都大学東北大学神戸大学京都産業大学プレスリリース