オジさんの科学

オジさんがオモシロそうだと思った科学ネタを、勝手にお裾分けします。

あったら飲むか?ノンアルビール。

オジさんの科学vol.097 2024年1月号

あったら飲むか?ノンアルビール。

 

 先日、人間ドックに行ってきた。速報値では、とりあえず特に大きな異常はなかった。内視鏡検査で胃に腫瘍が見つかったが、「去年と同じですね」と言われたので、OK。長年居座っている良性の腫瘍だ。

 人間ドックの前に1ヶ月ほど禁酒をする先輩がいた。検査が終わった日から残りの11ヶ月は、浴びるように飲んでいた。体に良いのか悪いのか。入社前の健康診断の前の日に酒を飲み、血液検査の結果に響いて、入社が危うくなった後輩もいた。

 

 人間ドックや健康診断直前の2、3日はお酒を飲まないことにしている。今回は、前日、前々日とノンアルコールビールにした。飲みたい気分だが飲んじゃいけない時は、ノンアルコール飲料やアルコールテイスト飲料(以下合わせてノンアル飲料と呼ぶ)の出番だ。

 人間ドックの結果次第では、アルコールを控えるように言われる人もいるだろう。肝機能値が高かったり、糖尿病の気があったり。肥満気味の人もそうかも。とは言われても、なかなか減らないのがアルコール。ノンアル飲料は、代替になるのだろうか。

 

 昨年の11月に厚生労働省から、生活習慣病のリスクを高めるアルコール摂取量のガイドライン案が発表された。男性で1日当たり40g以上、女性の場合は20g以上とされた。なぜ男性が女性より多いのか、よくわからないが。

 

 過剰なアルコールの摂取は、世界的な課題の一つ。SDGsの中にも含まれている。過剰なアルコール摂取を減らす対策としてノンアル飲料の利用が考えられているそうだ。しかしこれまで、ノンアル飲料が飲酒量に与える影響に関するデータがなかった。

 

 筑波大学などの研究チームは、「ノンアルコール飲料の提供で飲酒量が減少することを世界で初めて実証」と発表した。

 ノンアル飲料を提供することで、飲酒量が減少することが分かった。アルコール飲料からノンアル飲料への置き換わりが起こったと考えられる。

 

 今回の研究は、アルコール依存症の患者、妊娠中や授乳中の人、過去に肝臓の病気と言われた人を除いた健康な男女を対象に行った。参加条件は、20歳以上で、週に4回以上飲酒し、飲酒日のアルコールの量が、男性で40g、女性で20g以上の人(厚生労働省ガイドライン案と同じだ)。かつノンアル飲料は、月1回以下しか飲まないこと。

 残念ながら、オジさんは条件から外れてしまう。定年し、コロナ禍になり、回数も酒量もだいぶ減ってしまったのだ。

 

 女性が69名、男性は54名の計123名が参加した。年齢分布は22歳から72歳までで、平均が47.5歳だった。

参加者は、無作為に次の2つのグループに分けられた。ノンアル飲料を無料で提供されるグループ(ノンアルGと呼ぶ)と何も提供されないグループ(アルコールGと呼ぶ)。

 ノンアルGには、12週間にわたってノンアル飲料が提供された。2021年の購入ランキングでビールテイスト商品の上位6品目とカクテルテイスト16商品の上位16品目の中から、提供商品を自由に選ぶことが出来た。でも、飲むか飲まないかは自由。

 アルコールGは、何もなし。

 

 


両グループともに、アルコール飲料の入手や飲酒に関して制約は設けなかった。お酒は勝手に飲んでよね、とした訳だ。

 参加者には、20週目までアルコール飲料ノンアルコール飲料の摂取量を記録してもらい、4週毎に集計した。

 

 ノンアルGは、実験が開始されるとアルコールの摂取量が減少し、ノンアル飲料が消費された(ちなみに、参加条件からわかるように、参加者はこれまでノンアル飲料をほとんど飲んでいない)。

 ノンアル飲料の提供が終る12週目の時点で、ノンアルGの1日のアルコール量摂取量は、平均11.5g減少していた。ビールに換算すると287.5mlに相当する。ちなみにその時点において、ノンアルコール飲料は1日平均314.3ml消費されていた。

 さらに、ノンアルGは、ノンアル飲料の提供終了後の13~20週においても、アルコールGよりもアルコール摂取量がずっと少なかった。

 

 研究チームは、ノンアルGについて、さらに詳しく分析した。

 男女ともにアルコールGと比較したアルコールの摂取量は減少しており、男女間での差はなかった。

 飲酒頻度を見ると男性は、最初の4週で若干の減少があったものの、それ以降はアルコールGの男性と差はなかった。ところがノンアルGの女性は、明らかに減っていた。

 逆に、飲酒した日のアルコール量を見ると、男性は減っていたにもかかわらず、女性の方は変化がなかった。

 男性は、ノンアル飲料とアルコール飲料をチャンポンで飲んでいたということなのか。一方で、女性は、飲む時は今までと変わらない量のアルコールを飲むが、ノンアルコール飲料休肝日を作っていたということだろうか。

 

 現役時代のオジさんも、に最初の1杯だけノンアルビールにしていたことを思い出した。とりあえずのビールは、ノンアルでも良いかも。

 つまみにもよるかもしれない。餃子にはビールと言われるが、これはノンアルビールでも良いかも。のどごしの良さがあれば問題ないと思う。揚げ物もOKかも。ノンアルチューハイも1~2杯なら代替できそうだ。ノンアルワインは、赤も白もイマイチだった。鍋の時は、やっぱり熱燗じゃないとなぁ。

 


や・そね

 

 

 

〈参考資料〉

プレスリリース

ノンアルコール飲料の提供で飲酒量が減少することを世界で初めて実証』

2023年10月5日 筑波大学

ノンアルコール飲料提供による飲酒量減少プロセスに性差あり』

2024年1月15日 筑波大学

 

ホームページ

アルコール健康医学協会 

https://www.arukenkyo.or.jp/health/base/index.html