オジさんの科学

オジさんがオモシロそうだと思った科学ネタを、勝手にお裾分けします。

ふたりは、かわいい。

オジさんの科学vol.095 2023年11月号

 

 幽体離脱をする漫才コンビ「ザ・たっち」。おろおろする2人に、愛嬌を感じる。このコンビが売れているのは、ふたごだからに他ならない。しかし単体で見れば、ただの小太りのちっちゃなおじさんだ。これが2人並ぶと、どうして人気が出るのだろうか? 似たような2人が並ぶとかわいいのか?マナカナなら分からないでもないが。。ふたごではないが、ウィンクもパフィーも似たような2人が並んでいた。 
しかし小太りおじさんである。

 

 大阪大学と国際電気通信基礎技術研究所の共同研究報告を読んで、この小太りおじさんコンビを思い出した。人は、似たような対象(人やモノ)が2つあると「かわいい」と感じるようなのだ。しかもその2つの対象がつながりを持っていると、いっそうかわいいと感じるそうだ。

 発表したのは、心理学やロボットの研究者たちの研究チーム。
最近、身近なところでロボットと出会う機会が増えた。ファミレスでは、配膳や片付けをしてくれる。ビルのお掃除や警備で巡回するロボットに出会うこともある。ペッパー君のお出迎えをうけることもあるし、パロやAIBOは、ペットだ。
人とかかわり、社会との関係を支援するロボットを「ソーシャルロボット」と呼ぶ。工場や建設現場などで使われる産業用ロボットと異なり、人との感情的なつながりが発生する。そこでソーシャルロボットは、社会に受け入れられるためや商品の魅力を上げるために、「かわいい」見た目にすることが多いそうだ。

 今回、研究チームは、見た目以外にかわいいと感じられる要素はないか、と考えた。そこで対象の数や対象間の関係が「かわいい」に影響するのではないかと、3つの実験を行った。

 最初の実験は、写真を使って行われた。適当に答える回答者を排除する仕組みを使い、162名から回答を得た。女性77名、男性84名、性別の明示を拒否した1名だった。年齢範囲は20代から60代、平均年齢は41.8歳。

 

 対象が1つの写真、対象が2つの写真、2つの対象の間に関係性がある写真の3種を1セットとし、これを4セット用意した。具体的には以下の通りだ。
①1人の男の子(ふたごのうちの1人)が正面を向いている写真、ふたごの男の子が正面を向いて並んだ写真、ふたごの男の子が見つめあう写真

②1人の女の子(ふたごのうちの1人)が正面を向いている写真、ふたごの女の子が正面を向いて並んだ写真、ふたごの女の子が見つめあう写真
③1個のサクランボ、離れた2個のサクランボ、柄の元でくっついた2個のサクランボ
④正面を向いた1台のロボット(小型の人型ロボット「Sota」)、正面を向いた2台のロボット、見つめ合い手を取り合っているように配置された2台のロボット
 
 参加者は、それぞれの写真を視て「まったくかわいくない」の0点から「とてもかわいい」の10点まで、かわいさを11段階で評価した。
 すべてのセットにおいて、2人あるいは2つの間に関係性がある写真がもっともかわいいと感じられる、という結果が得られた。

 実験2では、動画を使って検証した。この実験では、実験1には関与していない179名から有効な回答を得られた。女性が87名、男性は90名、性別の明示の拒否が2名。20代から60代で、平均年齢は41.44歳だった。

 この実験は、ロボットだけを対象として行われた。1台のロボットがカメラに向かって手を振る。2台のロボットが並んでカメラに手を振る。2台のロボットが手をつなぎ、お互いを見つめ合った後にカメラに手を振る。という3種類の動画を観て、実験1と同様に11段階評価を行った。
 1台のロボットよりも2台の方が、そして手をつないだ2台がさらにかわいい、という結果になった。

 では、対象物の数が多ければ多いほど良いのか、それとも適正な数があるのかを実験3で調べた。この実験では、ロボットがカメラに向かって手を振る動画を評価する。ロボットの数が1台から10台まで増えていく。2台以上の場合、ロボット同士は手を握り見つめ合った後にカメラに手を振る。
 実験1と2に参加していない152名から有効な回答が得られた。20代から60代までの女性67名、男性85名で、平均年齢は41.43歳だった。それぞれの動画を観て11段階評価をしてもらった。

 実験2と同様、1台より2台の方がかわいいという結果が出た。しかし3台以降は、数が多くなるにつれ右方下がりで、かわいいのスコアが落ちていった。一番かわいいのは2台の場合。次が3台の時。1台と同程度にかわいいと評価されたのは4台の時で、5台目以降はそれよりもかわいくないと評価された。これは、人間の短期記憶できる数が、4±1であることと関係があるのかもしれないと考えられるそうだ。


 街を歩くと、よく似たメイクやファッションでつるむ女子の2人組を見かける。手をつないでいたりする。彼女たちは、本能的に「ふたりは、かわいい」と思われることを、さらに関係性を強調することが効果的なことを知っているのかもしれない。またグループの場合の人数は、4人以内が良いのかもしれない。だからPerfumeキャンディーズはOKなのだ。
 しかし、ここで疑問が生じる。モー娘。やAKB、乃木坂はどうなるのだろうか。

 この報告では、「ロボットのフォーメーションが異なっていれば、例えば三角形など、ロボットの数が比較的多くても、知覚される『かわいい』感は変わるかもしれません」、あるいは「たくさんのロボットが密集していると、その光景を見た人は相互の関係性を認識し、ポジティブな印象を抱くかもしれません」と言っている。モー娘。や乃木坂の振り付けやおしゃべりのフォーメーション、あるいはユニットづくりには、様々な効果があるのかもしれない。

や・そね

<参考資料>
プレスリリース
「1人より2人のほうが『かわいい』?対象間のつながりが見えるとよりかわいと感じられる」
2023年10月16日 大阪大学

論文
Shiomi M, Hayashi R, Nittono H (2023) 
Is two cuter than one? number and relationship effects on the feeling of kawaii
Toward social robots. 
PLoS ONE 18(10): e0290433. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0290433