オジさんの科学

オジさんがオモシロそうだと思った科学ネタを、勝手にお裾分けします。

月誕生の謎、解明?

オジさんの科学vol.042 2019年6月号

※2019年6月に作成・配信した文章を、2020年8月に微修正・アーカイブしました。

 

 月は不思議な存在です。

 男はオオカミになっちゃうし。かぐや姫は勝手に帰っちゃうし。

 常にウサギがいる側しか見みせない、そんな裏表のある奴だし。

 衛星なのに、冥王星より大きいし。

 見た目の大きさが、太陽と同じだし。

 月って何者?

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 地球と月は、親子なのか兄弟なのか、それとも全くの他人なのか。生き物ならば、DNAを調べればはっきりする。でも天体の場合は簡単ではないようです。

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仕事や勉強をやり続ける「根気」のメカニズムがわかった。

オジさんの科学vol.041 2019年5月号

※この文章は2019年5月に作成・配信し、2020年7月に微修正・アーカイブしました。

 

f:id:ya-sone:20200720120244j:plain 子供の頃から、根気よくコツコツと勉強することが苦手だった。試験はいつも一夜漬け。高3の受験生の時でも、中2の弟より長く机に向かっていられなかった。

「同じ兄弟なのにどうしてこうも違うのかしら」といつも母は嘆いていた。

 

 先月、慶應義塾大学の研究グループが、根気を生み出すメカニズムを発見したと発表した。

 高い目標を達成するためには、粘り強く行動を続けることが求められる。その時の脳の仕組みが解明された。やっと、母の疑問に答えられる日が来た。

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盗まれたノーベル賞

オジさんの科学vol.040 2019年4月号
※この文章は2019年4月に作成・配信したものを、2020年7月に微修正しアーカイブしました。

 

 はやぶさ2号機が次々とミッションをクリアしている。

 初号機が旅した小惑星イトカワ」は、日本の宇宙開発・ロケット開発の父「糸川英夫」博士に因んでいる。

 NASAでは、人工衛星に「ケプラー」「ハッブル」「フェルミ」など宇宙に関係する高名な科学者の名前をつけている。

 欧州宇宙機関(ESA)でも、「ニュートン」「プランク」「ユークリッド」と偉大な科学者の名前を使ってきた。そして先日、ロシアと共同で開発中の火星探査車の名前を「ロザリンド・フランクリン」に決定したと発表した。22カ国から公募で集まった3万6千通以上の中から選ばれた。

 このニュースを聞いた時、思わず「ESA偉いっ」とつぶやいてしまった。

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氷河期パークのつくり方

オジさんの科学vol.039 2019年3月号

※この文章は2019年3月に作成・配信し、2020年7月に微修正・アーカイブしました。

 

f:id:ya-sone:20200706110328j:plain 2019年3月11日、近畿大学ロシア連邦サハ共和国アカデミー、東京農業大学東京工業大学、国立環境研究所の共同研究グループが『2万8千年前のマンモスの細胞核の動きを確認』と発表した。

 シベリアの永久凍土に埋まっていたケナガマンモスから採取した細胞核を、マウスの卵子に注入したところ、細胞分裂する直前の形にまで復活した。「絶滅動物における生命現象の細胞レベルでの再現などが期待されます」とのことだ。1万年前に絶滅したマンモスの再生へ一歩前進した、と聞こえた。

 

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ハダカで足を引っ張るやつ

オジさんの科学vol.038 2019年2月号

(この文章は2019年2月に作成・配信し、2020年6月に微修正・アーカイブしました)

 

 会社には、仕事の邪魔をする人たちがいます。

 例えば、仕事に集中させてくれない人たち。「ちょっといいですか?」企画書を書いているのに、隣で悩みを語り始める後輩。朝から大声で電話に説教をしているオジさん。山のように届く無関係なメールの原因は、やたらとccをつける同僚。

 仕事の効率化が図れない人たち。話が長くて、要領を得ない上司。仕事が遅いうえに間違いが多く、負担を増やす部下。反対はするけど対案を出さないオバさん。

 自分も知らず知らずのうちに同じようなことをやっているかもしれない。胸に手を当て考えてみよう(^_^;)
 でも一番性質が悪いのは、意図的に足を引っ張る人たちだ。 

 

f:id:ya-sone:20200629132113p:plain ハチやアリなどの社会を構築する生き物は、互いに協力するように進化した。
 ところが理化学研究所総合研究大学院大学などの研究チームは、社会を構築しながらも足の引っ張り合いをする動物を世界で初めてみつけた、と1月に発表した。
 はい、それはハダカデバネズミです。オジさんの科学、2度目の登場です。略して「デバ」と呼びます。

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新発見!記憶復活薬

オジさんの科学vol.037 2019年1月号

(2019年1月に配信した文章を、2020年6月に微修正し掲載しました)

 受験シーズンです。
 本番の試験で、覚えたはずの英単語が出てこない。公式が思い出せない。年表を忘れてしまった。そんな経験を持つオジさんやオバさんも、今や子どもや孫が受験生。「うちの子は大丈夫かしら」と、ハラハラドキドキしているはず。

 

f:id:ya-sone:20200608112928p:plain もしも、記憶を蘇らせる薬があったら、買い与えますか?
 絶対買う13%、多分買う31%、金額次第で買う28%、多分買わない9%、絶対買わない3%、分からない・無回答16%。妄想アンケートでした。

 そんな薬があったらお受験ドーピングです。

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隙間の神様

オジさんの科学 vol.036 2018年12月号

 (2018年12月に配信した文章を、2020年5月に微修正しアーカイブしました)

 

 本格的な冬がやってきました。木枯らしの季節です。昔のアパートは、けっこう隙間風が入ってきました。

 我が家の猫の鈴さんは、炬燵の代わりに毛布の隙間に潜り込みます。いつの間にか扉の隙間からクローゼットに入り込んでいます。隙間が大好きなようです。

 裏路地のビルや野山の木々の隙間を抜けた先には、別世界がありそうな気がします。それに誘われてか、ボクのティーショットのボールは、よく林の隙間に遊びに行きます。

 

 生物も競合を避けて、様々な隙間で生きています。深海や土の中にも棲んでいます。

 商品も同じです。小さなブランドは、リーダーが手をつけない隙間を狙って新しい市場を開拓します。ポカリスエットは、スポーツドリンクと言うジャンルを切り開いたように。隙間の先には青い海が広がっているかもしれません。

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 先日ノーベル賞を受賞した本庶さんの研究も、最初はほとんど期待されなかったそうです。国内のあちこちの製薬メーカーに声をかけたものの、軒並み冷ややかな反応だったそうです。「何もやってくれなかった」と本庶さんは言っていましたが、その中で共同開発したのが小野薬品だったそうです。

 いま、免疫療法は手術、放射線抗がん剤に続く第4のがん治療として注目されています。

 

 判っても何の役にも立たないので、ずっと誰も調べなかった研究もあります。

 先日「チコちゃんに叱られる!」でも紹介された、指鳴らしのメカニズムの研究がそうでした。今年の3月末に研究成果が発表され、100年来の謎が解明されました。

  番組やニュースを観ていない人のために、簡単に説明します。「ヤッタルデ~」とか「シメタル」とか、心の関西弁が出る時に指の関節をポキポキ鳴らす、アレです。

 関節の骨と骨の隙間は「滑液(かつえき)」で満たされています。この液体が骨がすり減る事を防いだり、関節の動きを滑らかにします。関節を曲げると、滑液の中の圧力が変化します。急激に変化した時に、中に溶けていた気体が泡になる事があります。その泡が弾けて、ポキッと鳴るのだそうです。

 

 指鳴らしが泡の破裂音だとする説は、昔からありました。しかし指関節内部をリアルタイムで確認する方法がありませんでした。そこで仏のエコール・ポリテクニークのバラカット教授らは数学モデルを使い、理論的に泡が音を鳴らしていることを検証しました。

 

 さてもうひとつ、なんだかよくわからないし、役に立つかも不明。でも、ちょっとホッとするような研究を紹介します。natureダイジェストの12月号に載ったのは「タンポポの綿毛の秘密」です。

 タンポポの綿毛が、なぜあのようにフワリと浮遊するのか、これまで判っていなかったそうです。

 

 鳥や飛行機が飛ぶ時に、翼などと接する所に空気の渦ができます。この「渦輪(うずわ)」が物体を空中に浮かせる力を引き出しているそうです。ちなみに、このメカニズムは難しすぎてボクにはよく解りません。

 英エディンバラ大学の植物学者の中山尚美さんたちは、タンポポの綿毛を煙で満たした垂直な筒に入れ、風を送りました。煙の粒子をレーザーで光らせると、綿の上に渦輪が浮かび上がったそうです。

 

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 タンポポの種のように見えるのは痩果(そうか)と呼ばれる果実です。そこから柄が伸び、先端で傘の骨のように毛が広がっています。これが冠毛です。冠毛は90~110本あり、空隙率は92%で一定しているそうです。かなりスカスカなんですね。

 

 研究チームは、様々な隙間をもつシリコン製の小さな円盤つくり、実験してみました。するとタンポポの綿毛に近い空隙率の円盤だけが渦輪を維持できることが判りました。隙間だらけのタンポポの綿毛は、飛行には効率が悪そうに見えます。しかしこの隙間が渦輪を安定させているのです。

 

 最近「隙間の神」と言う概念を知りました。ウィキペディアには「現時点で科学知識で説明できない部分、すなわち『隙間』に神が存在するとする見方」とあります。科学が発達するにつれ、様々な自然現象を説明できるようになりました。太陽や月、雷や風などに神様は必要なくなってしまったのです。そして神様は、科学で証明されていない隙間にしか居られなくなったという話です。

 

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 今回の研究で、タンポポの綿毛の隙間にいた神様はどこかに行ってしまったのでしょうか。

 いえいえ今も綿毛の隙間で、小さな渦を作っている様に感じられます。

 ヒット商品も大発見も、指がポキッと鳴るのも隙間の神様の仕業かもしれません。林に飛んでいったティーショットが、なぜか時々フェアウェイに返ってくることがあります。これも隙間の神様が、ボールを蹴り出してくれているに違いありません。

                                                                                                   や・そね

<参考資料>

WEB

              ・NATUREダイジェスト日本版2018年12月号      

              ・ウィキペディア

 

雑誌     ・日経サイエンス2018年12月号、2019年1月号