オジさんの科学

オジさんがオモシロそうだと思った科学ネタを、勝手にお裾分けします。

月誕生の謎、解明?

オジさんの科学vol.042 2019年6月号

※2019年6月に作成・配信した文章を、2020年8月に微修正・アーカイブしました。

 

 月は不思議な存在です。

 男はオオカミになっちゃうし。かぐや姫は勝手に帰っちゃうし。

 常にウサギがいる側しか見みせない、そんな裏表のある奴だし。

 衛星なのに、冥王星より大きいし。

 見た目の大きさが、太陽と同じだし。

 月って何者?

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 地球と月は、親子なのか兄弟なのか、それとも全くの他人なのか。生き物ならば、DNAを調べればはっきりする。でも天体の場合は簡単ではないようです。

 先日、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの研究チームが、「月は地球のマグマオーシャンからできた」と発表した。マグマオーシャンとは、岩石がドロドロに溶けたマグマの海のこと。

 

 月の起源には、大きく分けて4つの説がある。
 まずは、地球の一部がブチッとちぎれて出来たという分裂説。親子説とも言われる。月は、地球の「クローン」だった。

 次は、どこか違う場所で生まれた月を、フラフラと通りかかった際に、地球が重力でグイッと捉まえたという捕獲説。他人説とも言う。迷子の月を地球は「養子」にしました。

 そして、太陽系ができた時に、仲良くオギャーと生まれたという双子集積説。地球と月は「兄弟」だったということだ。

 最後が、原始地球ともう一つの星がブチューとキスした時に、飛び散った物質で出来たというジャイアンインパクト(巨大衝突)説だ。月はふたりの「愛の結晶」でした。

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 地球から月がちぎれるためには、相当な遠心力が必要だ。だが、そうすると地球自体がバラバラになってしまうのでクローンはあり得ない。

 アポロ宇宙船が月から直接取ってきた月の石は、地球のマントルと成分がほぼ同じ。元をただせば、同じものではないかと考えられている。どうも養子ではなさそうだ。

 一方で、マントルとはよく似ているものの、何故か重い成分が含まれていない。地球には、鉄を主成分とする大きな核がある。しかし、月の核は小さい。月の平均密度は地球の約6割しかない。また、月には揮発性元素の量が少ない。兄弟なら、もっと構造や組成も似るはずなのだ。

 

 クローンや養子、兄弟でもなさそう。そこで出てきたのが、ジャイアンインパクトで出来た愛の結晶というアイディアだ。

 

 約46億年前に、地球の半分ほどの大きさの微惑星が激突した。
 この微惑星には、テイアというギリシャ神話にでてくる女神の名前が付けられている。テイアちゃんのキスから大きな月は生まれたのだ。
 ブチューとされた弾みで、地球は勢いよく回った。熱いキスで揮発成分は飛び散った。

 

 

f:id:ya-sone:20200803122948j:plain しかし、この説にも、弱点があった。
 月と地球のマントルの成分が、あまりにも似すぎているという点だ。
 テイアちゃんとのキスの様子を、コンピューターで計算してみた。すると月の成分の5分の1は地球に由来し、残る5分の4はテイアちゃんからになるはずだと示された。
 だが実際には、テイアちゃん成分がどこかに行ってしまっている。これは長年の問題点でした。

 今回、研究チームはこれの答えを見つけた。
 地球の状態を、マントルの成分がドロドロに溶けたマグマオーシャンと仮定してシミュレーションを行った。使ったのは理化学研究所スーパーコンピューター「京」だ。

 様々な衝突角度や衝突速度で計算を行うと、マグマオーシャンがあった場合には原始地球からの成分が多くなることが分かった。

 テイアちゃんがぶつかると、周りに地球のマグマの成分がジェットのように噴き出す。これが円盤のように地球を取り巻く。やがて集まり、月が産声を上げる。

 

 プレスリリースはこう結んでいます。「衝突した側の天体は、最初の衝突からしばらくした後に再び地球に衝突し、そのまま地球と合体します」

 ハマちゃんとみち子さんが合体して生まれたのは鯉太郎。原始地球とテイアちゃんが合体して生まれたのが月でした。ドモドモ。

 

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上記はJAMSTECのシミュレーション動画です。

月は地球のマグマオーシャンからできたhttps://www.youtube.com/watch?v=waDI4R2MdQ0

こっちもおもしろいよ。

全地球史アトラス 1.地球誕生https://www.youtube.com/watch?v=bbSdoBAyhZo&t=2s

 

                                                                                                                                       や・そね

<参考資料>

プレスリリース

                 ・『月は地球のマグマオーシャンからできた』 国⽴研究開発法⼈海洋研究開発機構

国⽴⼤学法⼈神⼾⼤学、国⽴研究開発法⼈理化学研究所                 2019年5月10日

書籍

・『月のかぐや』 JAXA  新潮社 2009年

・『夜ふかしするほど面白い「月の話」』 寺薗淳也 PHP文庫 2018年 

・『月を知る!』 三品隆司 岩崎書店 2017年 

WEB

Wikipedia『月』

・「月・惑星探査のポータルサイト『月探検情報ステーション』」

ポッドキャスト

                 ・『ヴォイニッチの科学書 第758回』 2019年5月18日