オジさんの科学

オジさんがオモシロそうだと思った科学ネタを、勝手にお裾分けします。

優秀な人たちと一緒に仕事をする時、 あなたはアイディアが出なくなっているかもしれない。

オジさんの科学vol.050 2020年2月号

2020年2月に配信した文章を2021年10月に微修正し、掲載しました。

 

 わたしたちは、様々な場面でアイディアや提案を求められます。

 プレゼンに向けてのブレストや新商品の企画会議、忘年会のネタだしや商店街イベント打合せなどなど。

 オジさんは、優秀なメンバーと一緒ならより良い企画ができる、と思っていました。仲間のアイディアに触発されて、自分の発想も広がるはずだと。

 ところが、今年1月東京大学の研究チームから「クリエイティブな仲間は自分の創造性を妨げる?」という首をかしげるようなリリースが出されました。

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 研究チームは「対象者のソーシャルなネットワーク構造が開放的であれば、創造性の高い情報共有者の存在がイノベーションにポジティブに作用することがわかりました。しかし逆に、対象者のネットワーク構造が閉鎖的な場合には、情報共有者の創造性がネガティブに作用してしまうことが明らかになりました」と発表しました。

むむ、ちょっと分かりづらいぞ・・・・。

 

 グループの仲間たちと一緒に企画やアイディアを考えています。その中に、良いアイディアをたくさん出すクリエイティビティの高い人がいるとします。
 グループが開放的な場合、その人は他の人にも良い影響を与えます。他の人からも、良いアイディアがたくさん出るようになります。
 一方で閉鎖的なグループの場合、他の人からは良いアイディアが出なくなるのです。

 閉鎖的なネットワークとは、メンバー間で同じ情報を共有している度合いが高いことを指します。つまり、よく知った同士のグループは閉鎖的ということになります。

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・・・・まだ分かりにくいので、もう少し研究の中身を見てみましょう。

 開放的なグループでは様々な情報がもたらされるため、良いアイディアが生み出されます。逆に閉鎖的だと無駄な情報がダラダラと流れるため、悪い影響が出ることは判っていました。
 さらに、クリエイティビティの高い人は、有力な情報源として他の人に良い影響を与える傾向があることも知られていました。
 しかし、この二つが相互にどう関係するかは、解っていませんでした。

 

 研究チームは、米国のパソコンメーカーであるデルの「アイディアストーム」というウェブサイトを使って検証しました。

 アイディアストームでは、一般のユーザーたちが互いにデルの商品開発やサービスに関して自由に情報を交換したり、アイディアを提案したりすることができます。そのアイディアは、デルの専門家チームによって有効性が評価されます。

 

 6,333名のユーザーと2,213,782件のデータが分析されました。
 ネットワークの開放性と情報共有者の有効アイディア数の組合せが、各対象者が提出する有効アイディア数に
どう影響するかを調べました。

 

 開放的なネットワークの場合は、情報共有者が提出した有効アイディアが多くなるほど対象者も多くの有効アイディアを提出できていました。

 一方で閉鎖的なネットワークの場合、情報共有者が提出した有効アイディアが多くなるほど対象者が提出する有効アイディアは減少しました。

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・・・・・うーん、まだ漠然としているなぁ。という事でオジさんが勝手に具体的な状況を想像してみました。

<一部の優秀な人以外は、良いアイディアを生まない閉鎖的なネットワークとは>

ケース①

わたしのチームには、優秀なクリエイティブディレクターが居ます。チームは結束力が強く、いつも同じメンバーで仕事をしています。クリエイティブディレクターの意見に従っていればよい仕事ができるので、とても安心です。

ケース②

課長は論理的だし、素晴らしいアイディアをどんどん出してきます。ボクが思いつくのは、課長の二番煎じの様な案ばかりです。どうせ論破されて採用されません。提案するだけ無駄なのです。

ケース③

ウチの商店街には、様々な試練を乗り越えてきた老舗がたくさんあります。時々若い奴が、商店街の活性化について提案をしてきます。でも、何を言っているかさっぱり分かりません。ウチは、伝統のやり方で成功してきたのです。

 

<優秀な人に触発されて、みんなが良いアイディアを生み出す開放的なネットワークとは>

ケース④

わが社では仕事毎にチームを組みます。その都度リーダーもメンバーも異なります。皆さん優秀な方々なので、いろいろなやり方が学べます。別のチームで学んだやり方をぶつけることにより、新しいアイディアが生まれることもあります。

ケース⑤

社内横断プロジェクトに、営業はボクだけです。必ず意見やアイディアを求められます。だから下手な鉄砲数撃ちゃ当たるで、とにかく提案しまくります。他のメンバーに負けないように、がんばります。

ケース⑥

今回の商店街活性化検討会は、様々なメンバーで構成されています。我々商店主だけでなく、馴染みのお客さんや、いつもはスーパーに行っている人たち、市役所の人やコンサルの先生、小学生にストリートミュージシャン等々。いろんなアイディアが出てきます。

 

こんな例であっているのかしら・・・・。

恐れず新しい世界へ飛び込め、多様性がある環境をつくれ、ってことかしら・・・・。

でも、閉鎖的ネットワークでも、アイディアが続出する場合もあるのです・・・・。

ケース⑦

いつものオジさんたちの集いは、他人の話が耳に入らぬほど自由闊達です。経済の活性化策からスイング理論まで、様々なアイディアが飛び出します。残念なのは、それを誰も次の日まで覚えていないことです。

                                                                                                  や・そね

 

<参考資料>

プレスリリース

 東京大学(2020)『クリエイティブな仲間は自分の創造性を妨げる?~イノベーション

ネットワーク構造の少し複雑な関係~』