オジさんの科学2017年9月号(この文章は2017年9月26日に書きました)
柿の種が「宇宙日本食」に選ばれた。宇宙日本食とはJAXA(宇宙航空研究開発機構)が認定した宇宙食。国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する日本の宇宙飛行士に、日本食を楽しんでもらい、ストレスを和らげる。ひいては仕事の効率が維持・向上することを目的につくられた。日本人がホッとする宇宙日本食。
柿の種が日本食かという疑問もあるが、それよりも大問題なのが、柿の種でいいのかということだ。柿の種がリスクになるのではないか。
敬愛する東海林さだお先生は『レバ刺しの丸かじり』の中で、こう書かれている。
「どうせなら『柿の種』だけでなく、そこに更にピーナッツが加わっていたほうが得ではないか。万人はここで『柿ピー』のほうを選ぶ」と。
ボクも当然柿ピー派だ。いざ食べる段になって、柿ピーではなく柿の種を与えられた宇宙飛行士はがっかりしてストレスが増大するのではないか。食べても食べても柿の種、探しても探してもピーナッツが出てこない。その結果、さまざまな実験に影響が出るのではないか。事故など起こらないだろうか。
ボクの心配はあっさり解決した。
各紙「亀田の柿の種」が選ばれたと報道した。
だが毎日新聞の本文を読むと、柿の種とピーナッツの比率について「6対4は黄金比率。宇宙であろうと不動です」と担当者のコメントが載っていた。
亀田製菓のホームページには「日本宇宙食『米菓(柿の種ピーナッツ入り)』としてJAXAから認証を受けました」とある。
ここにめでたく柿の種リスクは解消された。
1)バランス栄養バー(チーズ味)と2)イオンドリンクは大塚製薬製。
これってカロリーメイトとポカリスエット?
3)白飯4)赤飯5)山菜おこわ6)鮭おにぎりを尾西食品が作っている。
日本人はやっぱりコメですね。尾西食品は非常食や災害用食品の会社だ。
7)マヨネーズと8)白がゆはキユーピー。
欧米のリストにもマヨネーズはあるが、ツンとこないマヨネーズが求められた。
9)しょうゆラーメン10)シーフードラーメン11)カレーラーメンは日清食品。
ラーメンは日本の国民食、当然でしょう。
といっても無重力で液体スープは無理、
スープの粘度を高めたあんかけ焼きそば風だそうだ。
12)ビーフカレー13)ポークカレー14)チキンカレー15)ピーチゼリー
これらはハウス食品。
カレーもマル必ですね。甘口かしら?宇宙で激辛は危険です。
16)サバの味噌煮17)イワシのトマト煮18)サンマの蒲焼きはマルハニチロ。
キャンプの時はお世話になりました。
大西宇宙飛行士によるとサバの味噌煮はロシア の宇宙飛行士にも人気だそうだ。
19)粉末緑茶20)粉末ウーロン茶は三井農林から。お茶も日本人には必要だよね。
21)チューイングキャンディー22)ベイクドチョコは森永製菓。
ボクはお菓子を食べないので無くても全然大丈夫。
23)羊羹(小倉)24)羊羹(栗)が山崎製パン。同上。
25)黒飴26)ミントキャンディーをヤマザキビスケットが作っている。同上。
27)わかめスープは理研ビタミン。
わかめが詰らないように細かくし、且つ特殊な飲み口をつけた。
宇宙日本食の容器はすべて大日本印刷が開発した。
28)キシリトールガム(ライムミント)はロッテ。甘いものはパス。
ここに柿ピーが加わった。
なんだか色々あるような、そうでもないような。微妙に取り揃えてある。
あたりまえだが、宇宙食は宇宙で食べる。
初めて食べたのは1961年8月旧ソ連のボストーク2号に乗ったゲルマン・チトフ宇宙飛行士。メニューは判らない。
米国の最初は1962年2月マーキュリー計画に参画したジョン・ハーシェル・グレン宇宙飛行士。メニューはアップルソース、ビーフグレービー、野菜ペーストだった。すべてアルミチューブに入っていた。
宇宙食と言うと流動食のようなイメージがある。
当初は人間が無重力状態で食物を嚥下(飲み込むこと)できるか判らなかった。その為チューブに詰めたクリーム状、ゼリー状の食品だった。
嚥下できることが判った今は、レトルト食品や缶詰、フリーズドライ、半乾燥食品(乾燥フルーツ、乾燥牛肉など)、自然形態食(ナッツやクッキーなど)、果物や野菜もある。水やお湯を加えて戻したり、温めるだけ。調理はできない。容器をマジックテープ等で固定し、フォークとスプーンを使って食べる。
「宇宙食」(共立出版)に各国のメニューが載っている。日本人宇宙飛行士の食事は、基本米国のメニュー約200品目の中から選ぶ。ロシアは約100品目、ヨーロッパ、カナダが各10数品目程ある。
コーヒーだけでも10種類以上ある。「照り焼きビーフステーキ」に「エビのカクテルソース和え」。「特別な日のチキン」ってなんだろう。フランスのメニューには「スコッチ地方のサーモン、トマトを漬け込みナスのグリル添え」なんてのもある。ちゃんとしたレストランのようだ。
ベジタリアン向けもある。
宇宙食レストランがあったら流行るかもしれない。
大西宇宙飛行士によると、宇宙日本食は結構美味しいらしい。ということで食べてみました。
浜松町の世界貿易センタービルにある「宇宙の店」に行き、ビーフカレーと白飯、鮭おにぎりを買ってきた。羊羹もあったけど、甘いのでパス。
白飯のパッケージに熱湯を入れ、かき混ぜ15分待つ。カレーは熱湯の中に3~5分。
まずカレーを一口。スパイシー、中辛かな。ちゃんとした欧風カレー。きのこの食感がいい。舞茸、エリンギ、マッシュルームが入っている。
問題は白飯。お粥風かと思ったら、こんもりと固まった形でパックから出て来た。レンジでチンのご飯と遜色無い。
シャケおにぎりは水で作ってみた。待つこと1時間。ちょっといびつだが、形もおにぎりだ。細かなシャケが入った普通のおにぎりだった。
柿の種リスクは一件落着した。
しかし新たな疑問が湧いてきた。オジさんにとって柿ピーはビールのおつまみだ。
宇宙飛行士が柿ピーを食べてビールが飲みたくなったらどうする。ストレス源になってしまうのではないか。
宇宙ではアルコールはご法度。炭酸は重力が弱いと細かな泡にならないらしい。
「宇宙ノンアルコールビール」の開発、難易度は高い。
2017.09.26 や・そね