オジさんの科学

オジさんがオモシロそうだと思った科学ネタを、勝手にお裾分けします。

ちいさなさざ波

オジさんの科学vol.022 2017年10月号

(この文章は2017年10月に書いたものを、2020年1月にアーカイブしました)

 

 仕事中、地震でも無いのに揺れを感じることがある。ハンプティダンプティの様な同僚が、脇を通り過ぎるところだった。ハンプ君の推定体重は160kgだ。

 言っておくが、オジさんの会社は昭和初期に建てられた木造校舎では無い。最新の耐震装置を備えた地上39階建の高層ビルだ。

 げに恐ろしきは巨大生物なり。ゴジラが海に出現すれば、大きな波が打ち寄せる。アクアラインも壊れてしまう。上陸すれば、歩くたびに地響きがする。

 

f:id:ya-sone:20200111114006j:plain もっと大きな物体が動くと発生するのが「重力波」だ。孫悟空が撃つのはカメハメ波、キングギドラが放射するのは反重力光線だ。

 理論上どんな物体が動いても、重力波は発生する。オジさんもカメハメ波は撃てないが、重力波は発生させているのだ。ただあまりにちいさくて検出できないだけだ。


 2017年度のノーベル物理学賞は、「重力波の検出」に決まった。

 一方ドラゴンボールが漫画賞を受賞していないのは、マンガ界の七不思議の一つである(ウソ)。キングギドラは未だに日本アカデミー賞を受賞していない。

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宇宙の「柿の種」問題

オジさんの科学2017年9月号(この文章は2017年9月26日に書きました)

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 柿の種が「宇宙日本食」に選ばれた。宇宙日本食とはJAXA宇宙航空研究開発機構)が認定した宇宙食国際宇宙ステーションISS)に長期滞在する日本の宇宙飛行士に、日本食を楽しんでもらい、ストレスを和らげる。ひいては仕事の効率が維持・向上することを目的につくられた。日本人がホッとする宇宙日本食

 

 柿の種が日本食かという疑問もあるが、それよりも大問題なのが、柿の種でいいのかということだ。柿の種がリスクになるのではないか。

 敬愛する東海林さだお先生は『レバ刺しの丸かじり』の中で、こう書かれている。

「どうせなら『柿の種』だけでなく、そこに更にピーナッツが加わっていたほうが得ではないか。万人はここで『柿ピー』のほうを選ぶ」と。

 ボクも当然柿ピー派だ。いざ食べる段になって、柿ピーではなく柿の種を与えられた宇宙飛行士はがっかりしてストレスが増大するのではないか。食べても食べても柿の種、探しても探してもピーナッツが出てこない。その結果、さまざまな実験に影響が出るのではないか。事故など起こらないだろうか。

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ナノカーなのだ~

オジさんの科学vol.020 2017年8月号(2017.08.20作成2019.12.09修正)

 今年(2017年)の「インディ500」は、佐藤琢磨が日本人で初めて優勝を飾った。インディ500は世界三大レースのひとつと言われるカーレース。アメリカのインディアナポリスにあるコースを使い、500マイル(約805km)で競う。平均時速は350kmを超える。1911年に始まった歴史あるこのイベントは、アメリカンモータースポーツの典型と言われる。

 

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 ネイチャーダイジェストの7月号にインディ500とは真逆のレースの記事が載った。世界で初めて行われた世界最短のレースだ。

 タイトルは「世界初のナノカーレース開催!」。

 このレースは100ナノメートル(=1万分の1mm、髪の毛の太さの1/800位)の距離で競われた。

 会場はフランスのトゥールーズ。インディー500になぞらえて名づけるなら、「トゥールーズ161億分の1(マイル)」。

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将棋と脳

オジさんの科学vol.019 2017年7月号(2017年7月23日/2019年11月15日修正)

 

 藤井聡太四段が、驚異のプロ入り29連勝を達成した。そのおかげで、大将棋ブームの到来のようだ。オジさんも30連勝をかけた佐々木勇気五段との一戦を、abemaTVで観戦した。
 持ち時間は各5時間。丸一日考え続ける。みろく亭の冷やし中華大盛りを食べている時も、きっと考えている。
 藤井四段は、持ち時間が無くなった終盤戦の瞬時の判断も正確だという評判だ。

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 14歳でプロ棋士になった藤井四段だけでなく、天才と呼ばれる棋士は多い。30連勝を阻止した佐々木五段も16歳でプロになった。

 藤井四段が三連勝している詰将棋選手権では、39手詰以内で5問出題される。制限時間は90分。解答が早ければ早いほど上位になる。オジさんはせいぜい5手詰まで、まぐれで解けても7手詰が限界だ。

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「ハンバーガー」と「かば焼き」 

 歳をとると肉より魚を好むようになる。と言われるが、相変わらず肉の方が好きだ。ステーキに焼き肉、ハンバーグに生姜焼き、とんかつ、ビーフシチュー。
 暑い夏が始まる。炎天下のゴルフで倒れないように、肉を食べて体力をつけよう。

 毎月29日は「肉(29)の日」。肉の特売日だ。焼き肉の牛角では、通常価格4980円のメニューを290円で各店先着1名に提供したこともあった。
 ところが今月(6月)の29日は「無(6)肉の日」だそうだ。あえて肉を食べない日らしい。
 さて、無肉の日に肉を食べたい人は、何を食べればよいのでしょうか。

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恐竜から焼鳥をつくるには

 先月号(2017年4月号)の配信は、ぎりぎり末日に間に合った。焼鳥片手にビールでひとり打ち上げ。
 ほっとした翌日、日経サイエンスの6月号を取りだしてびっくり。あらら、なんと特集が「恐竜から鳥へ」。
 先月号で、鳥の祖先は恐竜であることをお伝えした。
 そこで今月号では、「自分で恐竜を鳥に進化させ、焼鳥にして一杯やりたい」というオジさんたちの夢のために、日経サイエンスの記事などからその手順をお教えしたいと思う。

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 ①「初期の恐竜」を手に入れる

 まず、今から2億3000万年以上も前、中生代三畳紀という時代に生息していた原始的な恐竜を用意する。
 既にこの時代の恐竜は、鳥の特徴である3本の指が前向きについたまっすぐな脚を持っている。これにより恐竜は速く走ることができ、生存競争で優位に立てる。その中に、綿毛のような羽毛を持った恐竜がいる。これを選んでほしい。
 だが、この羽毛では風を捉えられず、飛べない。
 では、どんな役割を担っているのか。
 一つは、恐竜の体温を保持するためと考えられる。もう一つの理由がディスプレイだ。鮮やかな色の羽を持った恐竜もいることがわかっている。相手を驚かしたり、異性の気をひいたりするのだ。


②「気嚢(きのう)」をつくる

 ①を1500万年ほど進化させると、気嚢がつくられる。
 気嚢とは薄い膜の袋状の呼吸器官だ。気嚢があると肺は息を吸い込むときだけではなく、吐くときにも酸素を取り込める。巨大な恐竜は気嚢を発達させ、大量の酸素を効率的に取り込むことにより、大きなエネルギーを発生させる。
 鳥はこの気嚢を引き継ぐことにより、酸素が薄い高い空の上を飛行できるようになる。チベットには、エベレストの上空を飛ぶ鶴の仲間が居る。
 空気袋である気嚢は、体内でかなりのスペースを必要とする。その一部は骨の中にも入り込んでいき、スカスカにする。結果として鳥の軽量化が実現する。

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③叉骨をつくる

 そのうちに、恐竜は左右の「鎖骨」をV字型に融合させ「叉骨」を発達させる。(鎖骨も叉骨も「さこつ」と読む)これにより前肢が安定し、獲物をつかむ時の衝撃をうまく吸収できるようになる。
 鳥はこの叉骨を転用し、羽ばたく際にエネルギーを蓄えるバネとして使うようになる。 

 

④正羽(せいう)をつくる

 正羽とは中に軸がある羽。赤い羽根募金や羽根ペンに使われるような普通の羽のこと。
 初期の恐竜を6~7000万年進化させる。すると綿毛の様な糸状の羽毛は長くなり、枝分かれする。そして幾つかの単純な束ができ、やがて中央の羽軸から羽枝が横に出て正羽になる。

 

⑤大きな翼をつくる

 正羽は互いに重なり合うように生えるようになり、ついに翼を持つ恐竜が現れる。
 このような偶然が少しずつ重なって飛べるようになるのだ。
 原始的な恐竜を8000万年ほど進化させると、始祖鳥が誕生する。自然界では今から約1億5000万年ほど前、ジュラ紀と呼ばれる時代に出現した。

 

 この間に鳥は、クチバシや飛行をコントロールする大きな前脳を発達させたり、前脚(翼)が折りたためるようにしたり、大人になるまでの成長速度が上げたりした。
 小さくもなったようだ。大英自然史博物館展で見た始祖鳥の化石は、わずか3~40cm四方の石板の中に納まっていた。

 

 では、どんな遺伝子を使って鳥の特徴はつくられたのだろう。 
 今年(2017年)2月、東北大学東京大学国立遺伝学研究所等の国際共同チームが「鳥の進化にあたって新しい遺伝子の獲得はほとんどなかった」と発表した。
 共同チームは、ニワトリやツバメ、ペンギン、ダチョウなどの様々な鳥類とカメやワニ、トカゲ、マウス、カエル、魚などの9種類の動物のDNAを比較した。

 

 その結果、鳥だけが共通して持つDNA配列が27万個見つかった。ところがそのうちの99.7%は遺伝子では無かった。これらは、鳥に進化する前から持っていた遺伝子の機能を制御する「スイッチ」の役割をするDNAだった。
 鳥のさまざまな特徴は、ありものの恐竜の遺伝子のスイッチをオンにしたり、オフにしたりすることにより生み出されることがわかった。

 

 今回見つけたスイッチの一つは、ある遺伝子を活性化させ、翼の風切羽や尾羽(両方とも正羽)をつりだすことが判った。同じ遺伝子を持っていても、スイッチが入らないために他の生き物では羽が生えない。 

 

 さて、始祖鳥から焼鳥までは、あと1億5000万年ほど進化が必要になる。
 ニワトリのお肉を得るには、東南アジアや南アジアに生息するセキショクヤケイ(赤色野鶏)を家畜化し、最後に数千年ほど進化させればOKだ。

 

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 鳥は飛ぶという目的に向かって進化したのではない。
 もちろんオジさんの焼鳥になるために進化したのでもない。
 進化は偶然の結果。しかもゆっくりゆっくりと少しずつ変化を積み重ねる。そして想像もしなかった結果を生む。様々な器官が本来とは別の使われ方をするようになり、飛べるようになった。

 

 鳥肉には「イミダゾールジペプチド」いう成分が含まれる。これが中高年の脳萎縮を抑制し、神経心理機能を改善する可能性がある、という研究結果がある。
 オジさんたちは、焼鳥が好きで毎日食べているだけです。それがボケ防止につながるなんて、まったく気づいていません。

オジさんの科学vol.017 2017年5月号                                                                                2017.05.20(2019.10.21改) や・そね

ボクが鳥を恐がるわけ

 近所で見慣れない鳥をみかけた。うぐいす色でスズメくらいの大きさだった。よく見ると、目の周りが白く縁どりされていた。メジロだろうということになった。
 ボクは鳥が苦手だ。メジロ程度の大きさなら何ともないが、ハトになるとダメである。近づいても逃げないから困る。
 犬なら怒っていれば唸るし、嬉しければ尻尾を振る。しかし鳥は何を考えているか分からない。しかも空を飛んで攻撃してくるかもしれない。
 歩道にハトが居ると、片側3車線の道路でも反対側に迂回する。
 浅草寺にお参りする時は、仲見世を過ぎると目をつぶって、手を引いてもらう。

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 さらに言うと鳥は恐竜の子孫だから怖い。

 ティラノサウルスや、ジュラシックパークで人間を襲うヴェロキラプトルなどが属するグループから進化したと考えられている。

 恐竜のほとんどは6,550万年前に絶滅したが、鳥は生き残った。
 恐竜は爬虫(はちゅう)類のはずだ。ボクたちは、鳥類と爬虫類は別物として教えられた。今回は「いつから鳥類が恐竜になったのか」のお話です。

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